複雑性PTSDは、従来のPTSD (心的外傷後ストレス障害)とは異なる症状を指す概念です。
主な特徴は以下の通りです。
1.重度で持続的なトラウマの影響
通常のPTSDは、一過性の出来事(事故、災害、犯罪被害など)によって引き起こされます。
複雑性PTSDは、長期間にわたる虐待、ネグレクト、家庭内暴力などの極端なストレス体験が原因となります。
2.対人関係の困難さ
複雑性PTSDでは、安全な人間関係を築くことが非常に困難になります。
他者を信頼できず、親密な関係から離れがちになるのが特徴です。
3.自己概念の問題
長期的なトラウマは自己価値の低下、無力感、罪悪感などの自己概念の問題をもたらします。
自己肯定感が極端に低くなることがあります。
4.感情調整の困難
感情の切り替えが上手くできず、攻撃性や解離、自傷行為などの問題行動につながりやすくなります。
5.意識・注意力の問題
トラウマ的な出来事を無意識的に回避したり、集中力が低下したりします。
※このように、複雑性PTSDは従来のPTSDよりも重症で、長期的で広範囲にわたる影響があります。
適切な治療を受けることが重要とされていますが、専門家によっても見逃されがちな症状だと指摘されています。
慢性化しやすいため、早期発見と治療介入が求められます。
複雑性PTSD 治療
複雑性PTSDの治療は難しい面があり、包括的なアプローチが求められます。
主な治療方法は以下の通りです。
1.精神療法
トラウマ焦点化認知行動療法(TF-CBT)が最も推奨されている精神療法です。
トラウマの記憶を安全な環境で想起し、認知の歪みや回避行動を修正していきます。
他にも、dialectical behavior therapy(DBT)、EMDR、内在化家族システム療法なども有効とされています。
それぞれの療法について簡潔に説明します。
・Dialectical Behavior Therapy (DBT)
マインドフルネスと対人スキルの習得を重視する認知行動療法の一種です。
感情の調整、ストレス耐性の向上、対人関係スキルの獲得を目指します。
自傷行為のある患者への適用で知られています。
・EMDR (Eye Movement Desensitization and Reprocessing)
目の動きに同期させた二重注意喚起によってトラウマの記憶を再体験し、新たな適応的な情報を与えることで、トラウマの影響を減少させる療法です。
PTSDの治療に広く用いられています。
・内在化家族システム療法:
複数の自己状態 (人格の一部) が1人の人間内に存在するという前提に立ち、それらを統合していく療法です。
トラウマによって分裂した自己を統合することで、PTSDの症状の改善を目指します。
※いずれも従来の認知行動療法に加えて、複雑性PTSDの特徴である感情調整の困難さや自己の分裂への働きかけを重視した療法です。
症状の重篤さや患者の特性に合わせて選択されることが多いようです。
2.薬物療法
抗うつ薬や抗不安薬が投与されることがあります。
PTSDの症状改善に一定の効果が期待できますが、根本的な解決にはなりません。
3.入院治療
症状が重度で、一般的な外来治療が難しい場合には、入院治療が検討されます。
短期入院で集中的な治療を行い、退院後は外来でフォローアップを続けます。
4.集団療法
同じ体験をした人々が集まり、お互いに体験を共有し、支え合う集団療法も有効です。
孤立しがちな複雑性PTSDの人にとって有益な側面があります。
5.生活スキルトレーニング
感情コントロール、対人スキル、問題解決スキルなどの生活スキルを身につけるトレーニングが重要視されています。
6.家族への支援
家族もカウンセリングなどのサポートを受け、患者を適切に理解し、支えることが求められます。
※このように、薬物、認知行動療法、生活スキル習得など、多面的なアプローチが必要不可欠です。
また、治療は長期に及ぶ可能性が高いため、地道な取り組みが重要となります。


