「天明の打ちこわし」から得られる最も重要な教訓は、危機において責任の所在を間違えると、問題が根本的に解決されず、かえって事態を悪化させる可能性があるということです。
「天明の打ちこわし」の背景には、天災による深刻な飢饉と米価の高騰がありました。
当時、幕政を主導していた田沼意次は、商業を奨励する経済政策を推進していましたが、これらの政策は汚職や賄賂の横行を招き、庶民の不満を高めていました。
しかし、飢饉と米価の高騰は直接的には天災が原因であり、田沼意次個人の責任とは言えませんでした。
それにもかかわらず、天災による人々の不満は、政敵である松平定信ら守旧派によって、田沼意次の政治に対する批判へとすり替えられました。
結果として、田沼意次はすべての責任を負わされ、失脚に追い込まれました。
しかし、これは日本にとって大きな損失でした。田沼意次は、印旛沼、手賀沼の干拓や、貨幣の交換相場の安定化、蝦夷地の開発計画など、行き詰まっていた幕藩体制を内部から変革する先駆的な施策を打ち出していました。
これらの改革は、田沼の失脚とともにすべて中止されてしまいました。
この出来事から、私たちは以下の教訓を学ぶことができます。
〇問題のすり替え
危機が発生した際、本質的な原因を追究せず、特定の個人やグループに責任を押し付けることで、本来解決すべき課題が先送りされてしまう。
〇変革の停滞
守旧派が権力を維持するために、将来を見据えた改革を妨げることがある。
田沼意次の失脚は、日本が近代的な経済へと移行する機会を失わせたとも言えます。
〇現代社会への教訓
私たちの社会でも、危機に直面した際に、責任を問う相手を間違え、本来責任を負うべき人物や組織が温存される事態が起こりうる。
これは公共の利益を損なうことにつながります。
この事件は、単なる歴史上の出来事ではなく、現代社会にも通じる深い教訓を含んでいます。
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天明の打ちこわしと現代の米騒動の類似点
1. 米価高騰による庶民の生活不安
・天明期
浅間山の噴火や冷害による大飢饉で米が不足し、価格が急騰。庶民は日々の食事すらままならず、怒りが爆発。
・現代
災害や国際情勢(例:ウクライナ戦争、円安)などによる物流混乱や投機で米価が上昇。特に低所得層に打撃。
2. 商人、流通業者への不信と暴動
・天明期
米の買い占めや価格操作を行う商人が標的となり、米屋が襲撃される「打ちこわし」が発生。
・現代
SNSなどで流通業者や政府の対応への不満が拡散。抗議活動や買い占め騒動が起こるケースもある。
3. 政治的対応の失敗と政権への影響
・天明期
田沼意次による規制緩和(米穀売買勝手令)が逆効果となり、米価がさらに高騰。政権交代の一因に。
・現代
政府の備蓄米放出や補助金政策が十分に機能せず、支持率低下や選挙争点化につながる。
4. 都市部への流民集中と社会不安
・天明期
地方の飢民が江戸に流入し、「お救い小屋」などの救済策が限界に達する。
・現代
地方の経済困窮者が都市部に移動し、生活保護や炊き出しに依存する層が増加。社会的分断が顕在化。
※このように、食糧価格の高騰が庶民の生活を直撃し、商業、政治、社会の構造的脆弱性を露呈させるという点で、天明の打ちこわしと現代の米騒動は本質的に似ています。
違いは、情報伝達手段(黄表紙 vs SNS)や暴動の規模、形態にありますが、根底にある「生活不安と政治不信の連鎖」は共通しています。

