小泉セツ(小泉八雲/ラフカディオ・ハーンの妻)をモデルにしたNHK朝の連続テレビ小説では、彼女が慣れない英会話に苦戦し、挫折する姿がコミカルに描かれることがあります。
しかし、史実における彼女は、決して挫折したわけではありません。
むしろ、独自の方法で言語の壁を乗り越え、ハーンとの間に「ヘルン言葉」と呼ばれる独自のコミュニケーション体系を築き上げました。
セツの英語習得に関する実態は、以下のようなものでした。
*「共通言語」の創造
セツは、いわゆる学校で習うようなアカデミックな英文法をマスターしたわけではありませんでした。
しかし、ハーンが日本語を学び、セツが英語を歩み寄る形で、二人にしか通じない特殊な日本語(文法は日本語だが語彙は英語が混ざる、あるいはその逆)を作り上げました。
*ハーンの創作の最大の協力者
ハーンの代表作である『怪談(KWAIDAN)』の多くは、セツが日本の古本や民話から再構成して彼に語って聞かせたものです。
これには高度な意思疎通が不可欠であり、彼女はハーンが理解できる言葉で、物語のニュアンスを正確に伝える能力を持っていました。
*筆談と独学
ハーンが亡くなった後も、彼女はハーンの知人たちと交流を続けており、最低限の読み書きや意思疎通はこなしていたと考えられます。
【PR】
今から人生を謳歌する ピアノ演奏のすすめ
■なぜドラマでは「挫折」として描かれるのか?
ドラマの演出として「挫折」が使われるのには、主に2つの理由が考えられます。
1. 人間味の演出
完璧なヒロインよりも、失敗したり悩んだりする姿を描くことで、視聴者の共感を得やすいため。
2. ハーンとの絆を強調するため
「英語がペラペラになったから理解し合えた」のではなく、「言葉が不完全でも心を通わせ、独自の言葉を作り上げた」という二人の深い絆を際立たせるための対比として使われます。
※史実のセツ
標準的な英語学習にはこだわらず、「ハーンと心を通わせるための言葉」を習得することに大成功したと言えます。

