難治性爪白癬(なんじせいそうはくせん)は、皮膚糸状菌による感染症で、爪に発症します。
主な症状は以下の通りです。
・爪の変色
爪が白く濁ったり、黄色や茶色に変色したりします。
変色は爪の一部からはじまり、次第に広がっていきます。
・爪の肥厚
爪が次第に厚くなり、変形していきます。
・爪の破損
爪が層状に割れたり、砕けたりして破損します。
・爪周囲の発赤、腫れ
爪の周りが赤く腫れ上がったり、痛みを伴うこともあります。
・くすみや臭い、爪がくすんで見え、時に不快な臭いがすることもあります。
※爪白癬は高齢者や糖尿病患者などで発症しやすく、一度感染すると完治が難しい難治性の病気です。
感染が進行すると、爪が完全に剥がれ落ちてしまうこともあります。
早期発見と適切な治療が大切です。
再発も多いため、予防対策も重要になってきます。
難治性爪白癬 原因
爪白癬は皮膚糸状菌による感染症ですが、難治性になる主な原因は以下のようなことが考えられています。
1.菌種の違い
主に細菌門の子嚢菌類が原因菌となりますが、菌種によって病原性が異なります。
トリコフィトン属の一部の菌種は難治性で、治療に抵抗性を示します。
2.菌量が多い
爪は菌が蔓延しにくい環境ですが、一度感染が進行すると爪内部に多量の菌が存在するようになり、治療が困難になります。
3.爪の構造
爪は硬くてしっかりした構造をしているため、薬剤の浸透が難しく、菌を根絶できません。
特に爪の根元は厚く薬が行き渡りにくいです。
4.宿主側の要因
高齢者や糖尿病患者、免疫抑制状態の方は治りにくい傾向があります。
血行が悪いと薬剤の行き渡りが悪化します。
5.再感染のリスク
周囲の環境から再感染するリスクがあり、一度治療が奏功しても再発しやすいことが難治性につながります。
※このように、爪白癬は菌側、宿主側の両方の要因が複雑に関与して難治化する病態です。
早期発見と環境対策が重要視されています。
難治性爪白癬 治療
難治性爪白癬の治療は一般的な爪白癬より困難を極めますが、以下のような治療法が行われています。
1.経口抗真菌剤
テルビナフィン、イトラコナゾール、フルコナゾールなどの経口抗真菌剤が第一選択肢です。
長期間(6ヶ月~1年)の内服が必要となります。
経口抗真菌剤には副作用や薬物相互作用のリスクがあり、注意が必要です。
◆テルビナフィン
・主な副作用:頭痛
消化器症状、肝機能障害、味覚障害など
・相互作用
コレステロール低下剤、経口避妊薬、リファンピシンなどとの相互作用に注意
◆イトラコナゾール
・主な副作用
下痢、嘔吐、肝機能障害、頭痛、めまいなど
・相互作用
他の経口抗真菌剤、ワルファリン、三環系抗うつ剤、スタチンなどとの併用に注意
◆フルコナゾール
・主な副作用
下痢、腹痛、肝機能障害、発疹など
・相互作用
フェニトイン、ワルファリン、経口避妊薬、三環系抗うつ剤などとの相互作用に注意
※肝機能障害が起これば直ちに投与中止が必要です。
特に高齢者や肝障害のある患者では慎重投与が求められます。
また、これらの薬剤は胃酸が低下すると吸収が悪くなるため、制酸剤などとの同時服用は避けるべきです。
全身状態や他の薬剤の使用状況を十分に確認し、定期的な検査をしながら慎重に投与することが大切となります。
2 外用抗真菌剤
経口剤と併用して、外用製剤(クリーム・ラッカー)を塗布します。
単独では効果が低いですが、経口剤との併用で相乗効果が期待できます。
3.薬物治療補助療法
レーザー治療や光線力学療法を薬物治療に併用することで、治療効果が高まる可能性があります。
4.爪切除、爪抜去術
変形が進行した爪を外科的に切除、抜去することで、真菌を物理的に除去する方法です。
再発リスクに注意が必要です。
5.温熱療法
40~50度の温熱で真菌を死滅させる治療法で、薬物療法の補助として有効とされています。
※いずれの治療法も長期に渡る根気強い治療が不可欠です。
再発リスクが高いため、環境対策なども重要視されています。
難治例では複数の治療法を組み合わせることが一般的です。
難治性爪白癬 予防
難治性爪白癬は再発しやすいため、予防対策が非常に重要になります。
主な予防策は以下の通りです。
1.足の清潔保持
足を清潔に保ち、乾燥させることが基本です。
入浴後は特に丁寧に足を拭き、湿気の残らないよう注意します。
2.靴下の交換
汗をかきやすい靴下は菌が繁殖しやすいため、こまめに交換しましょう。
通気性の良い素材を選ぶと良いでしょう。
3.靴の消毒
靴の中は菌が残りがちなので、消毒剤や紫外線を使って靴の消毒をすることをおすすめします。
4.爪の適切な管理
健常な爪を保つため、適切な長さに切る、爪を傷つけないなどの管理が重要です。
5.公衆浴場の注意
公衆浴場の脱衣場や更衣室は濃厚接触の場所なので、素足での歩行は避けましょう。
6.環境の清潔保持
家庭内でも、浴室やトイレなどは清潔に保つ必要があります。
7.再発時の早期発見、早期治療
定期的に足や爪を観察し、少しでも異常を感じたら早期に受診しましょう。
※再発リスクが高い難治性爪白癬では、予防対策を徹底し、環境整備と早期発見に努めることが大切になります。