キス病とは、感染性単核球症(Infectious Mononucleosis)の通称です。
この疾患は、通常はエプスタイン・バーウイルス(Epstein-Barr virus、EBV)(EBウイルス)によって引き起こされます。
一般的には、キス病は他の人との接触によって広まりますが、唾液を介しても感染することがあります。
キス病の主な症状には、以下のようなものがあります:
1.発熱
通常は38℃以上の発熱があります。高熱が続く場合があります。
2.咽頭痛
のどの痛みや腫れがあります。
3.リンパ節の腫れ
首の後ろや脇の下など、身体のさまざまな場所で腫れが起こることがあります。
4.疲労感
極度の疲労や倦怠感がみられることがあります。
5.発疹
皮膚に赤い発疹が現れることがありますが、これは稀です。
6.肝機能障害
肝臓の機能に影響を与えることがあり、黄疸(黄色の皮膚や白目)が現れる場合もあります。
7.脾臓の腫れ
脾臓が腫れることがあり、腹部の不快感や圧迫感が起こることがあります。
※これらの症状は、通常、感染後数週間から数か月にわたって持続します。
ただし、一部の人は感染しても症状が軽く、ほとんど症状が現れないこともあります。
特に重症な場合には、抗ウイルス薬や症状を和らげる薬が処方される場合もありますが、それらは症状の軽減を目的とした対症療法にすぎません。
ただし、キス病は他の疾患と混同されやすいことがありますので、症状がある場合には医師に相談し、適切な検査と診断を受けることが重要です。
キス病 原因
キス病(感染性単核球症)の主な原因は、エプスタイン・バーウイルス(Epstein-Barr virus、EBV)と呼ばれるウイルスです。
EBVは、ヒトの唾液や他の体液を介して広がります。
感染性単核球症は、感染した人の唾液を介して他の人に伝染することがよく知られています。
以下は、EBV感染がキス病を引き起こす主なプロセスです。
1.接触
感染した人の唾液や他の体液との密接な接触により、ウイルスが伝播します。
これには、キスをすることや、感染した人と同じ飲み物や食器を共有することが含まれます。
2.侵入
EBVは、口やのどなどの粘膜を通して体内に侵入します。
ウイルスは、上気道の細胞に感染し、そこから体内のリンパ組織に広がります。
3.増殖
EBVはリンパ球に特に感染し、そこで増殖します。
これにより、免疫系の反応が引き起こされ、症状が現れます。
4.免疫応答
免疫系はEBVに対する抗体を生成し、感染を制御しようとしますが、このプロセスが炎症や他の症状を引き起こす可能性があります。
※一般的に、EBV感染は幼少期や若年成人期に広まります。
多くの場合、感染した人は免疫系によって制御され、症状が現れないか、軽度のものにとどまります。
しかし、一部の人ではキス病の症状が現れ、その重症度は個人によって異なります。
キス病 治療
キス病(感染性単核球症)の治療は、主に症状の管理と休養に焦点を当てています。
通常、キス病は自然に回復しますが、症状を和らげるためにいくつかの対症療法が行われることがあります。
1.休養
キス病の症状は通常、体の免疫系がウイルスに対処するためにエネルギーを消費するため、休息が非常に重要です。
十分な休息を取り、身体の免疫系がウイルスに対処するのを支援します。
2.痛みや発熱の薬
高熱や喉の痛みなどの症状を軽減するために、解熱剤や鎮痛剤が処方されることがあります。
ただし、子供にはアスピリンを与えてはいけません。
子供にアスピリンを与えてはいけない主な理由は、Reye症候群と呼ばれる深刻な合併症のリスクがあるからです。
Reye症候群は、インフルエンザや水疱瘡などのウイルス性疾患の際にアスピリンを摂取した場合に発生することがあります。
Reye症候群は、急性脳症と急性脂肪肝を特徴とする症候群であり、重篤な神経系および肝臓の障害を引き起こします。
この症候群は重篤であり、死に至ることもあります。
アスピリンは、感染症に伴う痛みや発熱を軽減するために一般的に使用されますが、子供の場合、代わりにアセトアミノフェン(パラセタモール)やイブプロフェンのような非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)が推奨されます。
これらの薬はReye症候群のリスクを持たないため、子供に安全に使用することができます。
3.水分補給
発熱や咽頭痛によって、水分摂取が不足しがちになるため、水分補給が重要です。
水分補給を怠ると、脱水症状が悪化する可能性があります。
4.栄養摂取
充分な栄養を摂取することも重要です。
体力が低下し、食欲不振になることがありますが、栄養バランスの良い食事を摂ることで回復を促進することができます。
5.抗ウイルス薬
重症の場合、抗ウイルス薬が処方されることがありますが、これらの薬は症状の軽減を目的としたものであり、ウイルスそのものを根治するものではありません。
6.合併症の管理
重篤な合併症(肝炎や脾臓の破裂など)が発生した場合には、それらの合併症に対する適切な治療が行われる必要があります。
※キス病の治療には一般的に特効薬はなく、感染が終息するまでの支持療法が主体です。
また、症状の悪化や合併症の可能性があるため、必ず医師の指示に従い、治療を受けることが重要です。
キス病 肝臓
キス病(感染性単核球症)は、エプスタイン・バーウイルス(Epstein-Barr virus、EBV)によって引き起こされる感染症であり、肝臓にも影響を及ぼすことがあります。
キス病による肝臓への影響は、症状が現れる場合もありますし、無症候性の場合もあります。
キス病における肝臓への影響は次のようなものが考えられます。
1.肝臓機能障害
EBV感染によって肝臓の細胞が炎症を起こし、肝機能に影響を与えることがあります。
これにより、肝臓の酵素や機能が異常になり、肝機能検査で上昇したAST(アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ)やALT(アラニンアミノトランスフェラーゼ)などの値が見られることがあります。
2.肝炎
一部の患者では、キス病によって急性肝炎が引き起こされることがあります。
これは肝臓の炎症と組織の損傷を伴う病態であり、黄疸(黄色の皮膚や白目)や腹部の不快感などの症状が見られる場合があります。
3.脾臓との関連
キス病によって脾臓が腫れることがあり、脾臓が大きくなることで肝臓への圧迫が増加し、肝臓への影響を引き起こす可能性があります。
※キス病による肝臓への影響は一般に自然に解消されますが、一部の患者では重症化することもあります。
特に急性肝炎の場合は、適切な管理が必要です。
医師は症状や検査結果に基づいて治療を決定し、必要に応じて特定の症状や合併症に対する治療を行います。