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免疫の警備役 制御性T細胞

制御性T細胞(Treg)は、免疫の「ブレーキ役」として働き、体が自分自身を攻撃しないように守る重要な細胞です。

将来的には、自己免疫疾患や老化に関係する病気の治療にも活用される可能性があります。

■制御性T細胞とは?
T細胞は、体の中に入ってきたウイルスや細菌などを攻撃する免疫細胞の一種です。

その中でも制御性T細胞(Treg)は、免疫の働きを「抑える」役割を持っています。

たとえば、風邪をひいたときは免疫がウイルスを攻撃しますが、治った後も攻撃を続けると体にダメージを与えてしまいます。

Tregはこのような「攻撃のしすぎ」を防ぎます。

■なぜ「警備役」と呼ばれるのか?
Tregは、免疫が暴走しないように見張っているからです。

免疫が間違って自分の体を攻撃する「自己免疫疾患」(たとえば1型糖尿病や関節リウマチ)を防ぐために働きます。

また、アレルギー反応や臓器移植の拒絶反応なども抑える役割があります。

■近い将来の活用:病気の治療
自己免疫疾患の治療では、Tregの働きを強めることで、免疫の暴走を抑える方法が研究されています。

たとえば、多発性硬化症という神経の病気では、Tregが炎症を抑えることが確認されています。

また、がん治療では逆にTregの一部を選択的に減らすことで、免疫ががん細胞を攻撃しやすくなるという研究も進んでいます。

■老化との関係と期待
年をとると、免疫の働きが弱くなったり、逆に自分の体を攻撃するような異常な反応が起こりやすくなります。

最近の研究では、加齢により増える特殊なT細胞(ThA細胞)が、自己免疫疾患や老化に関係していることが分かってきました。

このThA細胞は、抗体を作る力と細胞を傷つける力の両方を持っていて、病気の進行に関わっている可能性があります。

将来的には、TregやThA細胞の働きを調整することで、健康寿命を延ばす治療法が開発されるかもしれません。

*まとめ
制御性T細胞は、免疫のバランスを保つために欠かせない存在です。

自己免疫疾患やがん、老化に関係する病気の治療に向けて、Tregを活用する研究が進んでいます。

覚えておきたいポイントは、「免疫にもブレーキが必要」であり、そのブレーキ役がTregだということです。

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制御性T細胞の発見した坂口志文氏の功績

坂口志文氏は、免疫の暴走を防ぐ「制御性T細胞(Treg)」を世界で初めて発見し、免疫学の常識を覆しました。

この功績により2025年、ノーベル生理学・医学賞を受賞しました。

〇発見の背景と意義
免疫は本来、ウイルスや細菌などの異物を攻撃しますが、過剰に働くと自分の体を攻撃する「自己免疫疾患」を引き起こします。

坂口氏は1990年代、胸腺を摘出したマウスに自己免疫疾患が起こる現象に注目し、CD25陽性CD4T細胞という特殊なT細胞が免疫の暴走を抑えることを発見しました。

この細胞は後に「制御性T細胞(Treg)」と名付けられ、免疫のブレーキ役として知られるようになります。

〇Foxp3遺伝子との関係
米国の研究者が、自己免疫疾患を起こすマウスにFoxp3遺伝子の異常があることを発見。

坂口氏はこの遺伝子が制御性T細胞の分化と機能を司る「マスター遺伝子」であることを証明しました。

〇医学への応用
自己免疫疾患(関節リウマチ、1型糖尿病など)では、Tregの働きを強めることで症状を抑える治療法が研究されています。

がん治療では、Tregががん細胞への免疫反応を抑えてしまうため、Tregを一時的に減らすことで免疫力を高める戦略が進められています。

移植医療では、Tregを使って拒絶反応を抑える臨床試験も行われています。

〇ノーベル賞受賞の理由
坂口氏は、免疫系が自分自身を攻撃しない仕組み(末梢免疫寛容)を解明し、免疫学の新たな地平を開きました。

彼の発見は、がん、自己免疫疾患、アレルギー、移植医療など幅広い分野に応用可能であると評価されました。

人物像と研究姿勢
「免疫にブレーキがあるはずだ」という信念を持ち、40年以上にわたって地道な研究を続けたことが受賞につながりました。

若い研究者に対して「自分の興味を持続することが新しい発見につながる」と語っています。