大腸憩室炎は、大腸の壁にできた袋状の憩室(けいしつ)が炎症を起こす病態を指します。
憩室は通常、大腸の壁に弱い部分ができてできる袋状の拡張です。
大腸憩室炎はこれらの憩室が炎症や感染によって起こる症状を指します。
大腸憩室炎の主な原因には以下の要因が関与しています。
1.便秘や腸の運動異常
大腸が正常に動かない場合、便が滞留しやすくなり、憩室ができやすくなります。
便秘や腸の動きの異常は大腸憩室炎のリスク因子となります。
2.高齢
年齢が上がるにつれて、大腸の壁が弱くなり、憩室ができやすくなります。
高齢者において大腸憩室炎が見られることがあります。
3.遺伝的な要因
遺伝的な要因も関与する可能性があります。
家族歴に大腸憩室炎がある場合、遺伝的な要因が関与している可能性があります。
4.炎症や感染
大腸憩室が炎症や感染を起こすことがあります。
これは通常、憩室内の便が滞留し、細菌が増殖することによるものです。
5.食物繊維不足
食物繊維が不足する食事は、便が硬くなりやすく、便通が悪くなります。
これが大腸憩室炎の原因となることがあります。
6.運動不足
適切な運動がないと、腸の動きが低下し、便秘のリスクが高まります。
これも大腸憩室炎のリスク因子です。
※診断や治療は医師の指導によるものであり、軽度な場合は食事療法や薬物療法が行われ、重度の場合は手術が必要なこともあります。
症状が続く場合は早めに医療機関を受診することが重要です。
大腸憩室炎 症状
大腸憩室炎の症状は、憩室(袋状の拡張)が炎症を起こすことによって生じます。
以下は、大腸憩室炎の一般的な症状ですが、症状の程度や表れ方は個人差があります。
1.腹痛
下腹部で発生する腹痛が一般的です。
これは憩室が炎症を起こすことによるもので、痛みの程度は軽度から激しいものまでさまざまです。
通常、発作的に起こり、特に排便後に強くなることがあります。
2.発熱
大腸憩室炎が感染を伴う場合、発熱が生じることがあります。
発熱は通常、炎症が進行している兆候となります。
3.下痢または便秘
大腸憩室炎は便通に影響を与えることがあります。
炎症によって腸の運動が乱れ、下痢や便秘が生じることがあります。
排便が不規則であると感じる場合は注意が必要です。
4.腹部の膨満感
憩室が拡張しているため、腹部に圧迫感や膨満感が生じることがあります。
これは食事後や排便後に増悪することがあります。
5.血便
大腸憩室炎が進行すると、憩室の壁が損傷されて出血することがあります。
この場合、便中に血が混じることがあります。
血便が見られる場合は、即座に医師に相談する必要があります。
6.吐き気や嘔吐
大腸憩室炎が進行すると、全身症状として吐き気や嘔吐が生じることがあります。
これは一般的に感染が進行している場合に見られる症状です。
※これらの症状が現れた場合、特に激しい腹痛や血便が伴う場合は、迅速に医療機関を受診することが重要です。
大腸憩室炎は早期に診断・治療を受けることが合併症の予防につながります。
医師の指導のもとで検査や治療が行われますので、自己判断せずに専門家の助言を仰ぐようにしましょう。
大腸憩室炎 治療法
大腸憩室炎の治療法は、症状や患者の状態に応じて異なります。
以下は一般的な治療法のいくつかですが、必ずしも全てが適用されるわけではありません。
治療計画は医師によって個々の症状や病態に基づいて検討されます。
1.薬物療法
・抗生物質
感染が疑われる場合、抗生物質が処方されることがあります。
・抗炎症薬
炎症を和らげるために抗炎症薬が使用されることがあります。
2.食事療法
・食物繊維豊富な食事が推奨されることがあります。これにより便通が改善し、憩室にかかる負担が軽減される可能性があります。
・患者によっては、特定の食品の摂取を制限する必要があるかもしれません。
大腸憩室炎の治療中は、腸に負担をかけないように食事に気をつける必要があります。
一般的に、以下のような食品は避けた方が良いといわれています。
*赤身肉(特に牛肉)の食べすぎ。
*緑茶などのタンニンが含まれた飲み物の摂りすぎ。
*キシリトールや人工甘味料(アスパルテーム)などの摂りすぎ。
*種や皮のついた果物や野菜(ベリー類、とうもろこし、トマト、すいかなど)
*ごまやポピーシードなどの小さな粒状の食品。
これらの食品は、腸内環境を悪化させたり、憩室に詰まって炎症を引き起こしたりする可能性があるからです。
ただし、個人差や症状の程度によっても食事制限の必要性は変わるかもしれませんので、かかりつけの医師に相談することをおすすめします。
3.運動
適度な運動が推奨されます。
運動は腸の動きを促進し、便通を改善するのに役立つ可能性があります。
4.安静
炎症が強い場合や合併症がある場合、安静が必要な場合があります。
5.憩室出血の場合
憩室からの出血がある場合、経口鉄製剤が処方され、貧血を補完することがあります。
6.手術
重度の大腸憩室炎や合併症がある場合、手術が必要なことがあります。
手術の方法には憩室の切除や大腸の一部の摘出などが含まれます。
※治療法は患者の症状や病態によって異なるため、適切な治療法を見つけるためには、医師との相談が必要です。
自己判断や自己治療は避け、医師の指導に従うようにしましょう。
大腸憩室炎は早期に適切な治療を受けることで合併症のリスクを減少させることができます。
大腸憩室炎 合併症
大腸憩室炎が適切に治療されない場合や重症化すると、いくつかの合併症が生じる可能性があります。
以下は主な合併症の一部です。
1.憩室出血
憩室の壁が損傷されると、出血が生じることがあります。
便中に鮮血が混じるか、便の色が黒っぽくなることがあります。
これにより貧血が進行する可能性があります。
2.憩室穿孔(せんこう)
憩室が炎症で膨れ上がり、壁が薄くなると穿孔(穴が開くこと)が発生する可能性があります。
この合併症は非常に深刻で、腹膜炎を引き起こすことがあります。
3.腹膜炎
憩室が穿孔し、腸内の内容物が腹腔内に漏れ出すと、腹膜炎が生じる可能性があります。
これは急性で重篤な合併症であり、救急治療が必要です。
4.腸狭窄
憩室が炎症で慢性的になると、腸の通り道が狭くなり、腸狭窄が生じることがあります。
これにより腸の通過が妨げられ、腸重積と呼ばれる状態が引き起こされる可能性があります。
5.腹部膿瘍
憩室からの感染が腹腔内に広がり、腹部膿瘍が形成されることがあります。
これは重篤な合併症であり、外科的な処置が必要な場合があります。
※これらの合併症は重症であるため、大腸憩室炎の症状が続く場合や急激に悪化する場合は、迅速に医療機関を受診し、専門家の指導を受けることが重要です。
治療の遅れがこれらの合併症を悪化させる可能性がありますので、早期の診断と治療が大切です。