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微小血管狭心症 症状

微小血管狭心症は、冠動脈の主要な枝に有意な狭窄がなく、心臓への血液供給が低下することで発症する疾患です。

主な症状は以下の通りです。

1. 狭心痛(胸痛)
中等度の運動や精神的ストレスで誘発される絞扼感や圧迫感を伴う胸痛。

胸骨の裏側や左側胸部に現れることが多い。

安静にすると徐々に軽減する。

2. 息切れ
運動時や精神的ストレス時に現れる。

3. 疲労感
活動時に容易に疲労を感じる。

4. 不整脈
微小血管狭心症による心筋虚血が引き金となり不整脈を生じることがある。

症状は一過性で発作的に起こり、発作時には冠動脈造影でも有意な狭窄は認められません。

微小血管の機能障害により心筋への血流が低下することが原因と考えられています。

女性や高齢者に多く見られる傾向があります。

診断には症状の観察に加え、運動負荷心電図や心筋シンチグラフィー、冠動脈CTなどの検査で冠動脈の主要病変がないことを確認する必要があります。

微小血管狭心症 原因
微小血管狭心症の原因は完全には解明されていませんが、以下のようなメカニズムが関与していると考えられています。

1. 冠微小血管の内皮細胞機能障害
冠微小血管の内皮細胞が産生する血管拡張物質(一酸化窒素など)と収縮物質のバランスが崩れ、血管が適切に拡張できない状態になる。

内皮細胞機能障害の原因として、高血圧、糖尿病、高脂血症、喫煙などの危険因子が指摘されている。

2. 冠微小血管の構造的変化
微小血管の肥厚や リモデリングにより、血管腔が狭小化する。

加齢に伴う微小血管の変性が一因と考えられている。

3. 冠微小血管の攣縮(れんしゅく=断続的に生じる異常な筋収縮状態)
各種の刺激で冠微小血管が一過性に攣縮し、血流が低下する。

ストレスや過換気など神経体液性因子の関与が示唆されている。

4. 心筋代謝障害
インスリン抵抗性などにより、心筋のエネルギー需給バランスが崩れ、潜在的な虚血が生じる可能性がある。

5. 心筋症や心筋炎後遺症
心筋の線維化などの器質的変化が残存し、微小循環障害を引き起こすことがある。

このように微小血管狭心症は、加齢や生活習慣病など複数の危険因子が関与し、微小血管の機能的、構造的変化を引き起こすことで発症すると考えられています。

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微小血管狭心症 治療

微小血管狭心症の治療には、生活習慣の改善と適切な薬物療法が中心となります。

1. 生活習慣の改善
・運動療法
安静時の狭心症状は改善しませんが、全身の血行動態を改善し、運動耐用能を高める効果があります。

・食事療法
肥満や高脂血症、糖尿病のリスク軽減を目指し、適切な食事管理が重要です。

・禁煙
喫煙は内皮細胞機能障害の主要な危険因子であり、禁煙指導が不可欠です。

2. 薬物療法
・硝酸薬
冠動脈を拡張し、心筋への血流を増やす作用があります。発作時や運動前の予防投与が有効です。

・Ca拮抗薬
冠微小血管の拡張作用があり、症状改善に有効とされています。

・ACE阻害薬/ARB
冠微小血管の内皮細胞機能改善作用があり、硝酸薬との併用が推奨されています。

・抗血小板薬
血小板凝集抑制作用があり、虚血性イベントの発症予防が期待できます。

・スタチン系薬剤
脂質低下作用に加え、内皮細胞機能改善作用があります。

3. 血行再建術
・冠動脈に有意狭窄がある場合には、PCIやCABGによる血行再建術が検討されます。

・微小血管障害には直接作用しませんが、誘発因子の除去が期待できます。

4. その他
・肥満・糖尿病・高脂血症などの基礎疾患の管理

・ストレス管理

・過換気防止のための呼吸指導

適切な生活習慣の改善と、個別の症状や危険因子に応じた薬物療法を組み合わせることが重要です。

治療による症状改善が不十分な場合には、侵襲的治療の適応も検討されます。

微小血管狭心症 致死率
微小血管狭心症自体の致死率については明確なデータは少ないのですが、以下のような知見があります。

・微小血管狭心症は通常の狭心症に比べて予後は良好とされていますが、無症候性心筋虚血のリスクがあります。

・心筋虚血が重症化し、心筋梗塞や心不全に進行すれば予後不良になる可能性があります。

・一部の研究では、微小血管狭心症患者の5年生存率は約95%と報告されています。

・しかし、微小血管狭心症患者には冠危険因子(糖尿病、高血圧、高脂血症など)を有する割合が高く、これらが死因になる可能性があります。

・治療が不十分な場合、虚血の進行により心室性不整脈が起こり、突然死の危険が高まります。

・従って、微小血管狭心症自体の致死率は低いものの、合併症や冠危険因子のコントロールが重要です。

・適切な生活習慣の改善と薬物治療を行うことにより、症状のコントロールと予後の改善が期待できます。

まとめると、早期発見・適切な治療介入により良好な予後が得られる一方で、無治療の場合は重症化する危険性もあり、注意深い経過観察と包括的な危険因子管理が肝心とされています。

微小血管狭心症 予防
微小血管狭心症の発症や進行を予防するためには、以下のような対策が重要となります。

1. 生活習慣の改善
・禁煙

・適度な運動

・食事療法(適正体重の維持、食塩制限、抗酸化食品の摂取など)

・ストレス管理

これらにより、内皮細胞機能障害の主要な原因である高血圧、糖尿病、高脂血症などの危険因子を予防・改善できます。

2. 基礎疾患の適切な管理
・高血圧

・糖尿病

・高脂血症

・肥満

これらの生活習慣病をコントロールすることで、微小血管障害の進行を抑制できます。

3. 薬物療法
・スタチン系薬剤

・ACE阻害薬/ARB

・抗酸化剤

これらの薬剤には冠微小血管の内皮細胞機能を改善する作用があり、予防効果が期待できます。

4. 運動療法
適度な有酸素運動を継続することで、全身の血行動態が改善し、虚血のリスクが低下します。

5. 健診での早期発見
心電図検査や負荷心機能検査などで異常がある場合は、冠動脈造影などの精密検査を受ける必要があります。

6. 危険因子のリスク層別化
複数の危険因子を有する高リスク者に対しては、より積極的な介入が求められます。

微小血管狭心症の予防には、生活習慣の是正と危険因子の管理が最も重要です。

さらに、定期的な健診で異常を早期発見し、進行を未然に防ぐことが大切となります。