腰の痛みが3か月以上続く状態を慢性腰痛という。国内の患者は推定1500万人以上と考えられている。腰痛全体の半分以上といわれている。
重苦しい痛みがダラダラ続いたり、よくなる・悪くなるを繰り返したりするという。最大の原因は腰の異常ではなく精神的なストレスといわれている。
どうして長引く?
慢性腰痛は、腰の痛みを和らげる仕組みと関係があるといいます。腰から痛みの信号が脳に伝わると、脳からドパミンという神経伝達物質が放出されるという。
そうすると、脳内でμオピオイドという物質が多量に放出されます。その結果、神経伝達物質であるセロトニンやノルアドレナリンが放出され、痛みの信号を脳に伝える経路が遮断されるという。
この仕組みによって、腰痛などの痛みが気にならなくなったり、我慢できたりするようになるといいます。しかし、ストレス、うつ、不安などを長期間感じていると、脳でドパミンが放出されにくくなって、腰痛が長引くと考えられている。
慢性腰痛はストレスが多い人なら誰でも起こりえるといいます。患者は小学生から高齢者まで幅広い年代にみられるといいます。特に30~50歳代の働き盛りに多く、都会の事務職に多いという報告があります。仕事や人間関係のストレスがある人は腰痛が長引きやすいといわれている。
都会の人に多い理由は、人混み、時間に追われるなどが挙げられます。また事務職に多い理由は、あまり体を動かさない、外を歩かないなどが考えられます。体を動かさないとストレスを溜めやすい、座りっぱなしや長時間同じ姿勢は腰痛を起こしやすいと考えられている。
ストレスチェック
慢性腰痛など運動機能の病気を持つ患者に対し医療機関で使われれているBS-POPという質問票。
「いいえ=1点」「時々=2点」「いつも、ほとんど=3点」
1.泣きたくなったり泣いたりすることがある
2.いつもみじめで気持ちが浮かない
3いつも緊張してイライラしている
4.ちょっとしたことがしゃくにさわって腹が立つ
5.なんとなく疲れる
6.痛み以外の理由で寝つきが悪い
「いいえ=3点」「時々=2点」「いつも、ほとんど=1点」
7.食欲はふつう
8.1日の中では朝方が一番気分がよい
9.いつもとかわりなく仕事がやれる
10睡眠に満足できる
※15点以上+腰痛の場合は、精神的な要因で腰痛が長引いている可能性があり、整形外科への受診が推奨されている。
疼痛誘発テスト
・椎間板に問題
前屈をした場合痛みが出る。
・椎間関節に問題
後ろに反ったり、体を左右に動かした場合痛みが出る。
圧痛テスト
指で腰を推してもらう。
・背骨に痛み → 椎間板、椎間関節に問題
・背骨から指2本あけた箇所に痛み → 筋肉に問題
・骨盤付近に痛み → 仙腸関節に問題
エクササイズ
腰痛に悩まされている人は、インナーマッスルが衰え、外側の筋肉や関節に負担が増えて痛みが出てしまっている。
この体の奥深くにあるインナーマッスルを上手に使えるようにする。
1.椎間板タイプ編
四つんばいになって、おへそを引き込むようにしてお腹に力を入れる。
そしてお腹に力を入れたまま、口から息を吐きながら、片脚をまっすぐ床と並行に上げてゆく。
骨盤が傾かないように気をつけよう。お腹に力が入っていると骨盤が安定する。
その姿勢で20秒静止したら、骨盤が動かないよう気をつけながら脚をかえる。両足2回繰り返して1セット。1日2セットが目標。
2.椎間関節タイプ編
四つんばい正座でお腹に軽く力を入れる。そして腰と背中全体を丸めるイメージで、息を吸いながら背中を丸める。
そしてお尻を後ろに引いて、かかとにつける。正座を行う要領。
このとき背中は丸めたまま行って下さい。背中を丸めると脊柱管は広がる。2回繰り返して1セット。1日2回が目標。
椎間関節に問題があるタイプの人は骨盤が前に傾き、いわゆる反り腰になっている人が多いのが特徴。
前傾した骨盤のクセを正すためには、太ももの前の筋肉のストレッチが有効。
片方の足の先を、手で後ろから引っ張る。膝の頭はもう一方の足に合わせよう。
できるだけ腰が反らないように注意して下さい。
10秒しっかり伸ばしたら、足を替える。
転倒に注意して無理せず行って下さい。
3.仙腸関節タイプ編
仰向けに寝て、脚を肩幅に開いて、膝を直角に立てる。
お腹に軽く力を入れて、ゆっくりと片脚を上げる。まっすぐ伸ばして上げよう。
脚が上がる時には、お腹の外側の筋肉にも力が入る。
ドローインでお腹の中にあるインナーマッスルを使ってから脚を動かして外側の筋肉を使う。
筋肉を使う順番の感覚を体に覚えさせる運動。
そのまま10秒間キープできたら、今度は伸ばした足を開いていく。
骨盤が動かないよう注意しよう。10秒間キープしたら、もう片方の脚でも行う。
両脚2回ずつで1セット。1日2セットを行う。
痛みを断ち切る治療
1.考え方の見直し
考え方を見直すことでストレスを軽減させる認知行動療法になります。
例えば、「原因の追究よりも今の症状に対処する」原因にこだわるとそれがストレスになり悪循環になる恐れがあるからです。今ある痛みとどう付き合うかを考える。
「痛みゼロをゴールにしない」達成が困難になりストレスになるからです。多少の痛みがあっても、毎日の生活や活動を続ける・広げることをゴールにしよう。
「痛みがあっても何とかなる」と考えれば自信にもつながります。自信を得れば、ストレスや不安を小さくできるようになる。
2.ウォーキングなど適度な運動や楽しいと感じることを行う
日常的に適度な運動や自分が楽しいと感じることを行うことで、脳からドパミンが放出されるため、痛みを抑える仕組みが活発になり、腰痛が軽減すると考えられている。
十分に改善しない場合は、脳や脊髄に作用する薬などが使われる。
デュロキセチン
脳に作用する薬で、セロトニンとノルアドレナリンの放出を増やして痛みを和らげる仕組みを活発に働かせる。
弱オピオイド
脳や脊髄に作用し痛みを麻痺させる。作用は弱く、使用は短期間。