成人脊柱変形症(ASD、Adult Spinal Deformity)の症状について詳しく説明します。
〇主な症状
1.腰痛および背部痛
最も一般的な症状で、慢性的な痛みが続くことが多いです。
立ったり座ったりする際や、長時間同じ姿勢を保つと痛みが増すことがあります。
2.姿勢の変化
背中が曲がったり、左右に傾いたりすることがあります。
身長が低くなることもあります。
3.歩行障害
正常な歩行が困難になり、歩行速度が遅くなることがあります。
長距離を歩くと疲れやすくなることがあります。
4.下肢の痛みやしびれ
脊髄や神経が圧迫されることで、足や脚に痛みやしびれが生じることがあります。
これにより、脚の力が弱く感じることもあります。
5.筋力低下
背中や腹部の筋力が低下し、姿勢を保つのが難しくなることがあります。
6.日常生活の制約
痛みや姿勢の変化により、日常生活や仕事に支障をきたすことがあります。
簡単な家事や趣味を続けるのが困難になることもあります。
〇その他の関連症状
・呼吸困難
胸郭が圧迫されることで、深呼吸がしにくくなることがあります。
・消化器症状
姿勢の変化により胃腸の機能に影響が出ることがあります。
※成人脊柱変形症は進行性の疾患であり、早期の診断と適切な治療が重要です。
症状が現れた場合は、専門医の診断を受けることをおすすめします。
成人脊柱変形症 原因
成人脊柱変形症は複雑な病態で、様々な要因が関与しています。
主な原因について詳しく説明します。
1. 加齢による変化
・椎間板の変性と狭小化
・椎体の骨粗鬆症による圧迫骨折
・靭帯の弛緩や肥厚
2. 退行性変化
・脊椎関節の変形性関節症
・椎間関節の変性
3. 筋力低下
・体幹筋や背筋の筋力低下
・不適切な姿勢の長期継続
4. 先天的要因
・脊柱側弯症などの先天性脊柱変形の進行
5. 外傷
・脊椎骨折後の変形治癒
・繰り返される微小外傷
6. 神経筋疾患
・パーキンソン病などによる姿勢異常
7. 代謝性疾患
・ビタミンD欠乏症
・副甲状腺機能亢進症による骨代謝異常
8. 炎症性疾患:
・強直性脊椎炎などの脊椎関節炎
9. 手術後の影響:
・脊椎手術後の隣接椎間障害
※これらの要因が単独または複合的に作用し、脊柱の変形を引き起こします。
個々の患者さんによって原因や程度が異なるため、適切な診断と個別化された治療アプローチが重要です。
成人脊柱変形症 治療
成人脊柱変形症の治療は、患者さんの症状の程度、変形の種類、全身状態などに応じて個別化されます。主な治療方法を詳しく説明いたします:
1. 保存的治療
a) 薬物療法
・非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)
・鎮痛剤
・筋弛緩剤
・骨粗鬆症治療薬(ビスホスホネート製剤など)
b) 理学療法
・ストレッチング
・筋力強化運動
・姿勢改善指導
・バランス訓練
c) 装具療法
・軟性コルセット
・硬性コルセット
d) 生活指導
・ergonomicsに基づいた日常生活動作の指導
・体重管理
2. 注射療法
・硬膜外ブロック注射
・神経根ブロック注射
・トリガーポイント注射
3. 手術療法
a) 除圧術
・椎弓切除術
・椎間孔拡大術
b) 固定術
・後方固定術
・前方固定術
・前後合併固定術
c) 矯正術
・骨切り術(PSO: Pedicle Subtraction Osteotomy など)
・椎体間楔状骨切り術(VCR: Vertebral Column Resection)
d) 低侵襲手術
・経皮的椎体形成術
・経皮的後弯矯正術
4. リハビリテーション
・術後の早期離床
・段階的な筋力強化
・歩行訓練
・ADL(日常生活動作)訓練
5. 補完代替療法
・鍼灸
・マッサージ
・ヨガ
※治療の選択は、症状の重症度、患者さんの年齢や全身状態、QOL(生活の質)への影響などを総合的に評価して決定されます。
多くの場合、保存的治療から開始し、効果が不十分な場合に手術を検討します。
また、治療は長期的な経過観察と管理が必要であり、継続的な医療チームのサポートが重要です。
成人脊柱変形症 合併症
成人脊柱変形症に伴う合併症は、患者さんのQOLに大きな影響を与える可能性があります。
主な合併症について詳しく説明します。
1. 神経学的合併症
a) 脊髄症
・歩行障害
・手指の巧緻運動障害
・膀胱直腸障害
b) 神経根症
・放散痛
・しびれ
・筋力低下
c) 馬尾症候群
馬尾症候群は、脊柱管内の馬尾(かび)と呼ばれる神経束が圧迫されることで生じる症候群です。
馬尾は脊髄の末端から分岐した神経根の束で、形状が馬の尾に似ていることからこの名前がつけられました。
・排尿障害
・排便障害
・会陰部感覚障害
2. 慢性疼痛
・腰痛
・下肢痛
・頚部痛
3. 呼吸器系合併症
・拘束性肺疾患
・睡眠時無呼吸症候群
4. 消化器系合併症
・逆流性食道炎
・便秘
5. 心血管系合併症
・冠動脈疾患リスクの増加
・深部静脈血栓症
6. 精神的合併症
・うつ病
・不安障害
・社会的孤立
7. 転倒リスクの増加
・骨折
・頭部外傷
8. 姿勢バランスの悪化
・歩行障害
・日常生活動作の制限
9. 皮膚合併症
・褥瘡(特に寝たきりの患者)
10. 手術関連合併症
・感染
・出血
・隣接椎間障害
・インプラント関連合併症
11. 骨粗鬆症の進行
・椎体骨折リスクの増加
12. 栄養障害
・姿勢変形による嚥下困難
・消化管圧迫による食欲低下
※これらの合併症は、患者さんの年齢、変形の程度、全身状態などによって発生リスクが異なります。
適切な予防策と早期発見、対応が重要です。
また、これらの合併症は相互に影響し合う可能性があるため、総合的な管理アプローチが必要です。
定期的な経過観察と多職種連携による包括的なケアが重要となります。


