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無色素性肢端悪性黒色腫 症状

無色素性肢端悚性黒色腫(Acral amelanotic melanomas、AAM)は、非常にまれな皮膚がんの一種です。

無色素性肢端悪性黒色腫は、通常の皮膚がんとは異なり、色素細胞が欠乏しているため、初期には色素沈着がほとんどみられない特徴があります。

一般的な皮膚がんは、細胞に異常が起こり過剰な色素が産生されるため、最初は茶色や黒色の異常な色素沈着として現れます。

しかし、無色素性肢端悪性黒色腫の場合は、そもそも色素細胞自体が欠落しているため、初期には肌色のしみや小さな隆起しか見られないことがあります。

つまり、ふつうの有色のホクロやイボとは見分けがつきにくい状態で発症するのが特徴です。

徐々に潰瘍化や出血を伴うようになって、初めて悪性が疑われるケースが多いのです。

まれな疾患ですが、指先や足先、口唇などの肢端部の小さな変化にも注意を払い、継続して経過観察することが大切となります。

主な症状は以下の通りです。

通常のメラノーマは黒や茶色の色素斑が特徴ですが、無色素性の場合、皮膚病変はピンク、赤、白、または肌色になることが多いです。

1.異常な形状や境界
病変の形が不規則で、境界がぼやけていることがあります。

2.成長や変化
病変が時間とともに大きくなる、形が変わる、または厚みが増すことがあります。

3.出血や潰瘍
時折、出血や潰瘍が見られることがあり、これは悪性黒色腫の進行を示す兆候です。

4.痛みやかゆみ
病変部に痛みやかゆみを感じることがありますが、これは必ずしも常に見られる症状ではありません。

5.リンパ節の腫れや疼痛を伴うことがあります。

6.転移が進むと、咳や呼吸困難、腹部の張りなどの症状が現れます。

発症初期は良性の母斑や加齢によるしみと間違えられやすく、見逃されがちです。

早期発見が重要で、指先や足先の変化には注意を払う必要があります。

遺伝的な要因もあり、白人に多く発症します。

紫外線暴露との関連は確認されていません。

治療は外科的切除が主体ですが、転移すると予後が非常に悪くなります。

まれな疾患ですが、症状があれば早めに皮膚科を受診することが大切です。

無色素性肢端悪性黒色腫 原因
無色素性肢端悪性黒色腫の原因については、完全には解明されていませんが、主に以下の2つの要因が関係していると考えられています。

1.遺伝的要因
この疾患には明らかな家族性がみられ、遺伝的素因が強く関与していると考えられています。

特にCDK4やCDKN2Aなどの細胞周期制御に関わる遺伝子の異常が指摘されています。

2.免疫機能の異常
正常な色素細胞に対する免疫応答の異常が、この疾患の発症に関与していると考えられています。

自己免疫的に正常な色素細胞が攻撃を受け、無色素状態になると推測されています。

その他にも、加齢による細胞の異常蓄積や、一部の化学物質への暴露なども原因の一つとして挙げられていますが、詳細は不明です。

発症のリスク因子としては白人種、免疫抑制状態などが知られています。

まれな疾患ですが、発症機序の解明は今後の課題とされ、さらなる研究が期待されています。

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無色素性肢端悪性黒色腫 治療

無色素性肢端悪性黒色腫の治療については、以下のようになっています。

【外科的切除】
初期段階であれば、手術による腫瘍の完全切除が第一選択肢となります。

十分な切除マージンを確保することが重要です。

リンパ節転移が認められる場合は、リンパ節郭清も合わせて行われます。

切除マージンとは、腫瘍を外科的に切除する際、腫瘍の周りにどれだけ正常組織を含めて切除するかを示す幅のことを指します。

具体的には、以下のように設定されることが一般的です。

・狭い切除マージン(マージンなし~1cm程度)
初期の小さな腫瘍に対して、切除マージンを最小限に抑えて施行されます。

美容上の理由などから、切除範囲を最小限に抑える必要がある場合に選択されます。

・広い切除マージン(2~3cm程度)
悪性度が高かったり、境界不明瞭な腫瘍に対しては、広範な正常組織を含めて切除することが推奨されています。

再発リスクを下げるために、十分な切除マージンを確保する必要があります。

・根治的切除とは、腫瘍の完全切除と適切な切除マージンの確保のことを指します。

無色素性肢端悪性黒色腫の場合、腫瘍の広がりが不明瞭なことが多いため、できるだけ広い切除マージン(2~3cm程度)を確保することが推奨されています。

完全切除が難しい場合は、追加治療が必要になる可能性があります。

【化学療法】
切除後に残存腫瘍があったり、転移があった場合は化学療法が適用されます。

ダカルバジン、テモゾロミド、cisプラチンなどの抗がん剤が単剤または併用で使われます。

【分子標的治療薬】
近年、BRAF遺伝子変異陽性例に対してBRAF阻害剤やMEK阻害剤の分子標的治療薬が適用されるようになってきました。

ベムラフェニブ、エンコラフェニブ、ビニオラルマブなどが使われています。

【免疫チェックポイント阻害剤】
従来の治療で効果不十分な場合、ペムブロリズマブ、ニボルマブなどの免疫チェックポイント阻害剤が選択肢になることもあります。

【放射線療法】
手術不能な場合や、緩和治療として、病変部への放射線照射が行われる場合があります。

早期発見、切除が最も重要ですが、進行例では集学的治療が必要になります。

まれな疾患ですが、近年、新規治療薬の開発なども進んでいます。

無色素性肢端悪性黒色腫 予防
無色素性肢端悪性黒色腫は、比較的まれな疾患ですが、一度発症すると転移しやすく予後が非常に悪くなる可能性があるため、予防対策は非常に重要となります。

主な予防法は以下の通りです。

1.定期的な自己検診
指先、足先、口唇など肢端部の変化に注意を払い、異常が見られたら早期に医師に相談することが大切です。

小さな変化でも見逃さず、経過観察が重要です。

2.リスク因子の管理
白人種や免疫抑制状態などのリスク因子がある場合は、特に注意が必要です。

免疫抑制剤の適正使用や感染症予防なども重要です。

3.遺伝カウンセリングの活用
家族性の場合は、遺伝カウンセリングを受けることで、発症リスクを事前に確認し、定期検診などの対策をとることができます。

4.日光過剰曝露の回避
紫外線暴露が直接の原因ではないものの、皮膚が慢性的に傷つくと発がんリスクが高まる可能性があるため、日焼けには気をつける必要があります。

5.化学物質曝露の回避
一部の有害化学物質が発がんの一因となる可能性があるため、職業性の曝露には注意を払う必要があります。

無色素性肢端悪性黒色腫の発症リスクを高める可能性のある有害化学物質としては、以下のようなものが報告されています。

・石綿(アスベスト)
石綿が体内に取り込まれると、発がん性があると指摘されています。

特に石綿関連職業に従事する人では注意が必要です。

・多環芳香族炭化水素類
たばこの煙やディーゼルエンジンの排気ガスに含まれるベンズピレンなどの化合物が発がん性を示すことが知られています。

・ヒ素化合物
一部のヒ素化合物は発がん性があり、農薬などに使用されていたこともあります。

飲料水などからのヒ素曝露が危険視されています。

・塩化ビニル
塩化ビニル製造業従事者で、肝がんのリスク増加が報告されているほか、一部で皮膚がんリスクも示唆されています。

・紫外線開始剤と呼ばれる一部の化学物質
パラフェニレンジアミンなどが、紫外線との相乗効果で発がん性を示すことが分かっています。

これらの有害物質への職業性や環境性の曝露を最小限に抑えることが、無色素性肢端悪性黒色腫の予防に役立つと考えられています。

曝露リスクがある場合は、十分な防護対策が必要になります。

発症すれば重篤になりやすい疾患ですが、リスク因子を適切に管理し、自己検診を心がけることで、早期発見・早期治療の機会を得られる可能性が高まります。

無色素性肢端悪性黒色腫 予後
無色素性肢端悪性黒色腫は、比較的まれな疾患ですが、進行すると非常に予後が悪く、高い致死率が報告されています。

具体的な5年生存率は以下の通りです。

・初期(病期I期)の場合: 約80~90%

・リンパ節転移があり進行した場合(III期): 約40~60%

・遠隔転移があり更に進行した場合(IV期): 10~25%

つまり、早期発見、早期治療が可能であれば、比較的良好な予後が期待できますが、転移すると致死率が急激に高くなります。

無色素性肢端悪性黒色腫の致死率が高い理由は以下が挙げられます。

1) 初期症状が分かりにくく、発見が遅れがち。

2) 転移しやすい性質があり、リンパ行性、血行性転移を起こしやすい。

3) 抗がん剤などの薬物療法への感受性が低い。

4) 根治切除が解剖学的に難しい部位に発生しやすい。

早期発見が重要な疾患ですが、死亡率を下げるためには、より効果的な新規治療薬の開発や、診断技術の改善が必要不可欠とされています。

現在、様々な研究が進められているのが現状です。