耳下腺腫瘍(じかせんしゅよう)は、耳の下にある耳下腺に発生する腫瘍です。
耳下腺腫瘍は良性と悪性の両方があり、良性のものが多いですが、悪性のものもあります。
以下に、耳下腺腫瘍の症状を説明します。
〇一般的な症状
1.耳下腺の腫れ
耳下腺腫瘍の最も一般的な症状は耳下腺の腫れです。
この腫れは痛みを伴わないことが多いですが、痛みを感じる場合もあります。
2.しこりの存在
腫瘍が成長するにつれて、耳下腺にしこりが感じられることがあります。
しこりは柔らかい場合も硬い場合もあります。
3.顔面神経麻痺
特に悪性腫瘍の場合、腫瘍が顔面神経を圧迫することで顔面神経麻痺が発生することがあります。
これにより、顔の片側が動かなくなることがあります。
4.痛み
腫瘍が成長することで痛みが発生することがあります。
特に食事や飲み物を摂取する際に痛みを感じることがあります。
5.しびれ
腫瘍が神経を圧迫することで、耳や顔の一部にしびれや感覚異常が生じることがあります。
6.口の乾き
腫瘍が唾液腺の機能に影響を与えることで、口の乾きが感じられることがあります。
〇悪性腫瘍の追加症状
悪性の耳下腺腫瘍の場合、以下のような追加の症状が見られることがあります。
1.急速な成長
悪性腫瘍は良性腫瘍よりも速く成長することが多いです。
2.周囲組織への浸潤
悪性腫瘍は周囲の組織に浸潤することがあり、これにより追加の症状や合併症が発生することがあります。
3.リンパ節の腫れ
首のリンパ節が腫れることがあります。
これは腫瘍がリンパ節に転移したことを示している可能性があります。
4.体重減少
不明な原因で体重が減少することがあります。
〇診断
耳下腺腫瘍の診断は、通常、以下の手順で行われます。
1.医療面接と身体検査
医師が症状について詳しく聞き取り、耳下腺の触診を行います。
2.画像検査
超音波検査、CTスキャン、MRIなどの画像検査が行われることがあります。
3.生検
腫瘍の一部を取り出して病理検査を行い、良性か悪性かを確認します。
※耳下腺腫瘍の早期発見と適切な治療が重要ですので、耳下腺に異常を感じた場合は、早めに医療機関を受診することをお勧めします。
耳下腺腫瘍 原因
耳下腺腫瘍の原因について説明します。
耳下腺腫瘍は複雑な病態で、その原因は完全には解明されていませんが、いくつかの要因が関連していると考えられています。
1. 遺伝的要因
一部の耳下腺腫瘍は遺伝的素因と関連があります。
特に多形腺腫などの良性腫瘍では、特定の遺伝子変異が関与している可能性があります。
2. 環境要因
放射線被曝や化学物質への長期暴露が、腫瘍発生のリスクを高める可能性があります。
3. ウイルス感染
エプスタイン・バーウイルス(EBV)などの特定のウイルス感染が、一部の悪性リンパ腫の発生に関連しているという報告があります。
4. 喫煙
喫煙者は非喫煙者と比較して、ワルチン腫瘍などの特定の耳下腺腫瘍のリスクが高くなる可能性があります。
5. 慢性炎症
長期にわたる慢性炎症が、腫瘍形成のリスクを高める可能性があります。
6. 免疫系の異常
自己免疫疾患を持つ人は、耳下腺腫瘍のリスクが高くなる可能性があります。
7. 年齢と性別
特定のタイプの耳下腺腫瘍は、年齢や性別によって発生頻度が異なることがあります。
*良性腫瘍
a) 多形腺腫(多形性腺腫)
・最も一般的な耳下腺腫瘍(約70-80%)
・主に30-50代の女性に多い
・緩慢に成長し、通常は無痛
b) ワルチン腫瘍
・2番目に多い良性腫瘍
・主に60-70代の男性に多い
・喫煙との関連が指摘されている
c) 基底細胞腺腫
・比較的稀な良性腫瘍
・主に高齢者に発生
*悪性腫瘍
a) 粘表皮癌
・最も一般的な悪性耳下腺腫瘍
・低悪性度から高悪性度まで様々
b) 腺様嚢胞癌
・神経周囲浸潤が特徴的
・遠隔転移のリスクが高い
c) 腺房細胞癌
・比較的低悪性度
・予後は一般的に良好
d) 扁平上皮癌
・高齢者に多い
・進行が早く、予後不良のことが多い
e) 悪性混合腫瘍
・多形腺腫から悪性化したもの
・長期間放置された多形腺腫に発生リスクがある
これらの腫瘍タイプは、それぞれ異なる臨床的特徴、治療法、予後を持っています。
診断には、画像検査(CT、MRI、超音波)と生検が重要です。
※これらの要因が単独または複合的に作用して、耳下腺腫瘍の発生に影響を与える可能性があります。
ただし、多くの場合、明確な原因を特定することは困難です。
耳下腺腫瘍 治療
耳下腺腫瘍の治療について詳しく説明します。
治療方法は、腫瘍の種類(良性か悪性か)、大きさ、進行度、患者の全身状態などによって異なります。
1. 外科的切除
最も一般的で主要な治療法です。
・良性腫瘍の場合
* 腫瘍のみを摘出する部分切除術が一般的
* 再発リスクを減らすため、周囲の正常組織も含めて切除
・悪性腫瘍の場合
* 耳下腺全摘出術が行われることが多い
* 必要に応じてリンパ節郭清も実施
【注意点】
顔面神経の温存が重要(麻痺のリスクあり)
術後合併症として唾液漏や一時的な顔面麻痺がある可能性
2. 放射線療法
主に悪性腫瘍の治療に用いられる。
単独で使用されることは少なく、通常は手術後の補助療法として実施。
手術が困難な場合の代替療法としても使用。
3. 化学療法
進行した悪性腫瘍や転移がある場合に考慮。
放射線療法と併用されることもある。
腫瘍の種類によって効果は異なる。
4. 経過観察
小さな良性腫瘍や高齢者の場合、定期的な経過観察のみを行うこともある。
腫瘍の急速な増大や症状の出現がない限り、積極的な治療を行わない場合もある。
5. 新しい治療法
標的療法や免疫療法など、新しい治療法の研究も進められている。
特定の遺伝子変異を標的とした薬剤の開発が進行中。
6. リハビリテーション
術後の顔面神経機能回復のためのリハビリテーションが重要。
言語療法や理学療法が行われることがある。
7. 経過観察と定期検診
治療後も定期的な経過観察が必要。
再発や転移の早期発見が重要。
※治療の選択は、腫瘍の特性だけでなく、患者の年齢、全身状態、希望なども考慮して決定されます。
また、治療には多くの専門家(耳鼻咽喉科医、腫瘍専門医、放射線科医、形成外科医など)が関わるチーム医療が重要です。
耳下腺腫瘍 生存率
耳下腺腫瘍の生存率について説明します。
生存率は腫瘍の種類(良性か悪性か)、ステージ、グレード、患者の年齢や全身状態などによって大きく異なります。
1. 良性腫瘍
良性腫瘍の場合、適切に治療されれば生存率は非常に高く、ほぼ100%に近いです。
ただし、再発の可能性があるため、長期的な経過観察が必要です。
2. 悪性腫瘍
悪性腫瘍の場合、5年生存率は腫瘍の種類やステージによって大きく異なります。
a) 全般的な統計
米国のデータによると、すべての悪性耳下腺腫瘍を合わせた5年相対生存率は約72%です。
b) ステージ別の5年生存率(概算)
・局所限局:約95%
・局所進行:約65%
・遠隔転移:約30%
c) 腫瘍タイプ別の5年生存率(概算)
・粘表皮癌:70-95%(グレードにより異なる)
・腺様嚢胞癌:60-70%
・腺房細胞癌:80-90%
・扁平上皮癌:25-30%
・悪性混合腫瘍:50-70%
3. 予後に影響を与える要因
・腫瘍の大きさ
・リンパ節転移の有無
・遠隔転移の有無
・腫瘍の分化度(グレード)
・患者の年齢と全身状態
・治療の種類と完全性
4. 長期的な観点:
悪性耳下腺腫瘍の場合、5年以降も再発や転移のリスクが続くため、長期的な経過観察が重要です。
10年、15年といった長期生存率も考慮する必要があります。
5. 注意点
これらの数字は統計的な平均値であり、個々の患者の予後は様々な要因によって異なります。
医学の進歩により、治療成績は年々改善しています。
最新の治療法によって、これらの生存率が向上する可能性があります。
6. 生活の質
生存率だけでなく、治療後の生活の質も重要な考慮事項です。
顔面神経機能の保存や合併症の管理が患者の長期的なQOLに大きく影響します。
個々の症例における具体的な予後については、担当医師との詳細な相談が必要です。
また、これらの統計は一般的な傾向を示すものであり、個別の症例では異なる可能性があることに注意してください。


