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肺がん 放射線治療 陽子線

肺がんに対する放射線治療、特に陽子線治療について説明します。

【放射線治療】
・肺がんの標準的な治療法の一つで、手術が困難な場合や手術後の追加治療として行われます。

・従来の放射線治療には高エネルギーX線が使用されてきました。

X線は体内を通過する際、がん部位だけでなく健常部位にも一定の被曝があります。

【陽子線治療】
・陽子線は荷電粒子線の一種で、X線に比べてがん部位への集中度が高く、健常部位への被曝が少ないのが特徴です。

・陽子線は体内に入った後、ある一定の深さで止まり、そこにエネルギーを集中的に付与します。

このピーク付近をBragg Peak(ブラッグピーク)と呼びます。

・がんの存在する深さにBragg Peakを一致させることで、がん部位に高線量を集中し、その前後の正常組織への被曝を抑えられます。

【利点】
・正常組織への影響が少ないため、副作用が抑えられる可能性があります。

・線量集中性が高いため、高線量を投与できる可能性があり、局所制御率が向上する可能性があります。

【課題】
・治療装置が大がかりで高額なため、施設が限られています。

・呼吸による動きの影響を受けやすく、肺がんへの適用には工夫が必要です。

※肺がん陽子線治療は正常組織への影響を抑えつつ、がん部位に高線量を集中できるため、有望な治療法と期待されています。

早期肺がん 保険治療 陽子線
2024年2月に厚生労働省は『令和6年度診療報酬改定』の内容を公表し、6月から早期肺がん(I期~IIA期)の陽子線治療が、新たに保険適用対象となることが明らかになりました。

陽子線治療は放射線治療の一種で、一般的なX線に比べて副作用が少なく、患者のQOL(生活の質)が高い治療法として知られています。

2016年に小児腫瘍(限局性の固形悪性腫瘍)が初めて保険収載され、その後、2018年、2022年の改定でも保険適用の疾患が増え続けています。

そして、2024年6月からは、ステージI期からIIA期の早期肺がんが新たに加わります。

ただし、同じ部位でも腫瘍の大きさや転移の有無などの条件によって、公的保険の対象とならない場合があります。

また、厚生労働省は先進医療を行う医療機関から定期的に報告を受け、有効性や安全性が科学的に確認できたものが公的医療保険の適用対象となります。

今回、保険適用となった早期肺がんの陽子線治療について、厚生労働省は『令和6年度診療報酬改定の概要(全体概要版)令和6年3月5日版』の中で、「既存のX線治療等と比較して生存率等の改善が確認された」疾患であるとしています。

今後も陽子線治療の保険適用は増え続けることが期待されます。

具体的な適用条件や治療方法については、医療機関にお問い合わせください。

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肺がん 薬物治療 3種類

肺がんの薬物治療には、従来の抗がん剤、分子標的薬、免疫チェックポイント阻害剤の3種類があり、それぞれ特徴が異なります。

【従来の抗がん剤】
・細胞分裂を阻害することでがん細胞の増殖を抑える作用があります。

・代表的な薬剤
シスプラチン、カルボプラチン、パクリタキセル、ドセタキセル、ゲムシタビン、ビノレルビン等。

・作用機序は単純でありながら、比較的多くのがん種に有効です。

・正常細胞にも影響するため、副作用(白血球減少、嘔気、脱毛など)が強い傾向にあります。

【分子標的薬】
・特定の分子を標的とし、がん細胞の増殖、転移に関わる特定の経路を阻害します。

・代表的な薬剤
ゲフィチニブ、エルロチニブ(EGFR遺伝子変異陽性)、クリゾチニブ、アレクチニブ(ALK融合遺伝子陽性)等。

・がん細胞のドライバー変異に合わせて使い分ける必要があります。

・従来薬に比べ副作用が軽い傾向にあります。

【免疫チェックポイント阻害剤】
・がん細胞が免疫系から攻撃を受けないよう、制御機構(チェックポイント)を利用しているのを阻害します。

・代表的な薬剤
ニボルマブ、ペムブロリズマブ(PD-1阻害剤)、アテゾリズマブ(PD-L1阻害剤)等 。

2019年には、小細胞肺がんの治療法として17年ぶりに新薬の免疫チェックポイント阻害薬テセントリクが登場しました。

・免疫系を正常化させ、がん細胞を攻撃できるようにします。

・自己免疫疾患様の副作用(下痢、発疹、肺障害など)があります。

【新薬情報】
1.EGFRチロシンキナーゼ阻害剤
これらの薬剤は、上皮成長因子受容体(EGFR)チロシンキナーゼの活性を阻害し、がん細胞の増殖を抑制します。

*イレッサ(一般名:ゲフィチニブ)

*タグリッソ(一般名:オシメルチニブ)

2.PD-1/PD-L1阻害剤:これらの薬剤は、免疫チェックポイント阻害薬とも呼ばれ、PD-1やPD-L1というタンパク質の働きを阻害し、免疫系ががん細胞を攻撃する能力を高めます。

*オプジーボ(一般名:ニボルマブ)

*キイトルーダ(一般名:ペムブロリズマブ)

*イミフィンジ(一般名:デュルバルマブ)

3.CTLA-4阻害剤:これらの薬剤は、CTLA-4というタンパク質の働きを阻害し、免疫系ががん細胞を攻撃する能力を高めます。

*ヤーボイ(一般名:イピリムマブ)

これらの薬剤は、それぞれがん細胞の増殖を抑制するための異なる標的を持っています。

それぞれの薬剤の選択は、がんの種類、患者の状態、および他の治療法との組み合わせにより異なります。

具体的な治療計画については、医師と相談することが重要です。

治療は、がんの種類、分子生物学的特徴、病期などに応じて、これらの薬剤を単剤または併用して行われます。

副作用に留意しつつ、最適な薬物治療法を選択することが重要です。