脳挫傷は重度の頭部外傷の一種で、脳実質が損傷を受けている状態を指します。
主な症状と経過について説明します。
【急性期の症状】
・意識障害(意識レベルの低下から昏睡状態まで)
・痙攣発作
・片麻痺や運動障害
・構音障害(言語障害)
・頭痛、吐き気、めまい
これらは脳の損傷部位と程度によって異なります。
症状が重篤な場合は、集中治療が必要になります。
【亜急性期、慢性期の症状】
一旦症状が落ち着いた後も、以下のような後遺症が残ることがあります。
・記憶障害、注意障害など高次脳機能障害
・意欲低下、易怒性など人格変化
・感覚障害(視覚障害、嗅覚障害など)
・片麻痺や運動障害
・てんかん発作
・頭痛
※回復過程では、リハビリテーションが重要になります。
症状が長期化する場合は、療養や介護が必要な場合もあります。
脳挫傷は症状が多様で、重症度にもよりますが、命に係わる危険な外傷です。
迅速な診断と適切な治療、経過観察が不可欠となります。
脳挫傷 原因
脳挫傷の主な原因は、頭部に強い外力が加わることによって生じます。
具体的には以下のようなケースが考えられます。
【交通事故】
・自動車同士の正面衝突や横転事故
・歩行者が車にはねられる
・自転車や二輪車での転倒事故
【転落、転倒事故】
・高所から転落する
・滑って転倒し、頭部を強く打撲する
【スポーツ外傷】
・格闘技での頭部への直撃
・球技でボールが頭部に直撃する
・転倒・落下による頭部打撲
【交通外傷外偶発外傷】
・強度の暴行による頭部打撲
・労災における落下物の頭部直撃
※これらの外力によって、頭部が強く動揺し、脳が頭蓋骨にあたり、脳実質が挫傷を受けるのが主な原因です。
症例によっては、頭蓋内出血を併発することもあります。
交通事故や高所からの転落など、高エネルギー外傷が脳挫傷の主な原因ですが、受傷機転によっては比較的軽い外力でも発生する可能性があります。
早期に適切な処置を行うことが重要です。
脳挫傷 治療
脳挫傷の治療については、急性期から慢性期まで段階に応じた対応が必要となります。
【急性期の治療】
・呼吸、循環の管理
意識障害がある場合は気道確保と人工呼吸が必須。
ショック対策も重要。
・頭蓋内圧亢進へ対処
脳浮腫による頭蓋内圧上昇に対し、安静、降圧、利尿剤、開頭減圧術などで対処。
・外科的処置
血腫除去術や開頭クリッピング術など、合併症への外科的アプローチ。
・症状に応じた集中治療
痙攣発作の抑制、感染症予防、栄養管理など全身管理が重要。
【亜急性期、回復期の治療】
・リハビリテーション
運動障害、高次脳機能障害などに対するリハビリが中心。
・薬物療法
抗てんかん薬、抗痙攣薬、抗うつ薬、注意障害改善薬の投与。
・外科的治療
慢性硬膜下血腫の穿頭術、シャント手術などが必要な場合も。
シャント手術とは、脳室と腹腔や静脈など他の体腔をチューブでつなぐ手術のことです。
脳挫傷の後遺症として、脳室拡大や水頭症を起こすことがあります。
この際、脳室内の脳脊髄液が過剰に貯留するため、シャント手術を行い余剰な脳脊髄液を体外に排出する必要があります。
具体的な手順は以下の通りです。
1.頭皮に小さな切開を加え、脳室にチューブ(シャント)の一端を留置する。
2.シャントの他端を腹腔や静脈などにつなげる。
3.シャントにはバルブが設置されており、一定の圧力で脳脊髄液が排出できるよう調節される。
これにより、脳室内の脳脊髄液が適切に排出され、頭蓋内圧が低下します。
シャント手術は水頭症の根本的な治療となり、脳挫傷の後遺症改善に有効な治療法の一つとされています。
【慢性期の治療】
・維持期リハビリ
ADL向上、社会復帰支援などの働きかけ。
ADL(Activities of Daily Living)とは、日常生活動作のことを指します。
具体的には、以下のような動作が含まれます。
*食事
*更衣(着替え)
*入浴
*トイレ動作
*移動(歩行、車いす移乗など)
*排せつのコントロール
つまり、一人で生活するために最低限必要な基本的な日常動作のことを指します。
ADLが自立できているかどうかは、リハビリテーションや介護の必要性を判断する重要な指標となります。
・介護、福祉支援
後遺症が重い場合は施設入所や訪問介護サービスの利用。
※回復までに長期に渡る包括的な治療が求められ、多職種が連携するのが理想的です。
症例に応じた集学的アプローチが重要となります。
脳挫傷 致死率
脳挫傷の致死率については、受傷の重症度や合併症の有無などによって大きく異なりますが、おおむね以下のように報告されています。
【軽症例】
・GCS 13-15点(意識障害がほとんどない)の場合、致死率は1-3%程度
・GCS 9-12点(軽度の意識障害)でも、重篤な合併症がなければ致死率は10%以下
【中等症例】
・GCS 9-12点で頭蓋内病変(出血、挫傷巣など)を伴う場合、致死率は10-30%
・GCSが6-8点(意識障害が中等度)の場合、致死率は35-50%
【重症例】
・GCSが3-5点(昏睡状態)で重度の脳損傷を伴う場合、致死率は50%を上回る
・瞳孔異常や除脳硬直を伴う重症例では、致死率は極めて高い
※つまり、受傷当初のGCS(Glasgow Coma Scale:意識レベル評価)、頭部CTでの病変の有無、合併症の程度などが、予後予測の大きな指標となります。
救急治療の進歩により致死率は低下しつつありますが、重症脳挫傷は依然として命に関わる重大な外傷です。
初期治療を的確に行うことが極めて重要視されています。


