スポンサーリンク

脳脊髄液減少症 初期症状

脳脊髄液減少症は、頭蓋内の脳脊髄液の量が異常に減少する疾患です。

初期症状としては、以下のようなものがあげられます。

1.頭痛
脳脊髄液が減少すると、頭蓋内の圧力バランスが崩れ、頭痛を引き起こします。

特に起床時や立位になったときに増悪する場合が多いです。

2.めまい、立ちくらみ
脳脊髄液減少に伴い、脳への血流が一時的に低下し、めまいや立ちくらみが生じることがあります。

3.頚部痛、肩こり
脳脊髄液減少により、頭蓋内の圧力変動が起こり、頚部や肩に痛みや緊張が生じます。

4.視覚障害
一過性の視力低下や複視、視野狭窄などの視覚障害が起こる可能性があります。

5.認知機能障害
注意力の低下や記憶力の低下など、軽度の認知機能障害を自覚することもあります。

6.聴力障害
一時的な難聴や耳鳴りなどの症状が現れる場合があります。

※これらの症状は、脳脊髄液減少の程度により異なり、重症化すると意識障害や運動障害なども生じる可能性があります。

初期症状が現れた場合は、専門医への相談が推奨されます。

脳脊髄液減少症 原因
脳脊髄液減少症の原因には、主に以下のようなものがあげられます。

1.外傷
頭部外傷や脊髄手術後の合併症として生じる場合があります。

外傷により脳脊髄液の流れが阻害されたり、くも膜下腔が損傷を受けたりすることで発症します。

2.脱水症
過度の発汗や下痢、嘔吐などにより体液が失われた際に、二次的に脳脊髄液も減少する可能性があります。

3.漏出症候群
先天的な異常や外傷、手術などにより、脳脊髄液の漏出経路ができてしまうことで発症します。

鼻腔や耳管から漏出することもあります。

4.低髄液圧症候群
脳室周囲脳室下腔開空術や硬膜下血腫手術後に起こりやすく、手術操作による影響が原因とされています。

5.薬剤性
利尿剤や非ステロイド性抗炎症剤など、一部の薬剤が脳脊髄液の産生や吸収に影響を与えることがあります。

6.腫瘍や先天異常
脳腫瘍や脊髄腫瘍、アーノルド・キアリ奇形などが脳脊髄液の流れを阻害する可能性があります。

アーノルド・キアリ奇形は、先天性の奇形の一種で、小脳の一部または脳幹が大後頭孔を通って頚椎管内に垂れ下がっている状態をいいます。

主な特徴は以下の通りです。

*小脳虫部や延髄が大後頭孔を越えて脊柱管内に垂れ下がる

*脳脊髄液の循環障害を引き起こす

*頭痛、めまい、運動失調、知覚障害などの症状がある

*重症例では呼吸障害や嚥下障害も生じる

*出生時から存在する先天奇形だが、症状が現れるのは思春期以降が多い

*MRIで確定診断される

*程度によっては手術が必要となる

脳幹や小脳が正常な位置から移動しているため、脳脊髄液の循環障害や脳神経の圧迫を引き起こし、様々な神経症状が現れるのが特徴的です。

7.原因不明
上記以外にも、原因が特定できない特発性の脳脊髄液減少症も存在します。

※発症経路は様々ですが、いずれの場合も脳脊髄液の減少が引き起こされることが本症の本態となります。

スポンサーリンク

脳脊髄液減少症 治療

脳脊髄液減少症の治療には、主に以下のようなアプローチがあります。

1.保存的治療
軽症例では、まず安静、補液、頭位管理などの保存的治療が試みられます。

具体的には、

・絶対安静と臥床

・水分、塩分の補給

・頭部を下げた体位を取ること

・カフェイン摂取の控え目

などが行われます。

これらにより症状が改善する場合があります。

2.薬物療法
症状緩和のために、以下の薬剤が使用されることがあります。

・止痛剤(NSAIDsなど)

・制吐剤

・低分子デキストラン製剤、アルブミン製剤(脳脊髄液の補充)

・カフェイン製剤(一時的な改善)

3.硬膜外血液補充療法
腰椎穿刺で採取した自己血液を硬膜外腔に注入し、一時的に脳脊髄液を補充する方法です。

4.手術療法
漏出部位が特定できた場合は、直達手術による修復が行われます。

また、原因である先天奇形や腫瘍があれば、その治療手術が必要となります。

5.シャント手術
最終的に脳室腹腔シャントや髄液腹腔シャントを留置し、過剰な脳脊髄液を腹腔内に排出させる外科的治療が選択されることがあります。

シャントとは、体内の一部から別の部位へ体液を誘導するための人工的な管腔(チューブ)のことを指します。

※症状の程度や原因により、段階を踏んで治療法が選択されますが、根本的な治療が難しい疾患です。

早期発見と適切な対症療法が重要視されています。

脳脊髄液減少症 致死率
脳脊髄液減少症自体は致死的な疾患ではありませんが、重症になると命に関わる可能性があります。

脳脊髄液減少症の致死率については、以下のような点が指摘されています。

・軽症例では致死率はほとんどゼロに近い

・重症になると脳ヘルニアなどのリスクが高まり、致死率は上昇する

・発症から適切な治療を受けるまでの時間が長いほど、致死率は高くなる

・原因疾患によっても致死率は異なる
(外傷性は比較的高い、薬剤性は低いなど)

具体的な数値については、
・軽症例の致死率は1%未満

・重症化した場合は10%前後

と報告されているデータがあります。

※ただし、脳脊髄液減少症は個人差が大きく、原因や程度、治療の時期によって大きく転帰が変わってくる病態です。

重症化する前に適切な治療を受けることが、命に関わるリスクを最小限に抑えるためには重要となります。

定期的な経過観察と、早期発見、早期加療が死亡リスクを下げる鍵となります。

致死的なケースはまれですが、決して軽視できない疾患だといえるでしょう。