若年性乳がんは、通常、40歳未満の若い女性で発生する乳がんのことを指します。
一般的に、乳がんは50歳以上の女性に多く見られますが、若年性乳がんは比較的珍しいです。
以下に、若年性乳がんに関するいくつかのポイントを紹介しますが、医学的な情報は常に最新のものを確認する必要があります。
1.発生の特徴
若年性乳がんは、通常、50歳以上の女性に見られる乳がんと比較して、よりアグレッシブで早い段階で発生することがあります。
若年性乳がんは、ホルモン受容体が陰性であることが多く、ホルモン療法が効かない人が多いという特徴があります。
2.リスク因子
遺伝的な要因や家族歴が関与する可能性があります。
BRCA1およびBRCA2などの遺伝子変異は、若年性乳がんのリスクを増加させることが知られています。
BRCA1とBRCA2は、がんの発生を抑制する役割を持つ遺伝子です。
これらの遺伝子に変異があると、乳がんや卵巣がんなどのリスクが高くなります。
BRCA1とBRCA2の違いは、以下のようになります。
・BRCA1に変異があると、卵巣がんのリスクが高くなります。
・BRCA2に変異があると、膵臓がんやメラノーマのリスクが高くなります。
・BRCA2に変異があると、男性では乳がんだけでなく前立腺がんのリスクも高まります。
BRCA1とBRCA2の変異は、親から子に50%の確率で遺伝します。
遺伝子検査を受けることで、自分が変異を持っているかどうかを知ることができます。
変異を持っている場合は、定期的ながん検診や予防的な手術、分子標的治療薬などの医学的管理が推奨されます。
3.症状
一般的な乳がんの症状が当てはまります。
具体的な症状には、乳房や乳頭のしこり、皮膚の変色、乳首からの分泌物などがあります。
4.検査と診断
乳がんの診断は、乳房の画像診断(マンモグラフィーや超音波)、生検、血液検査などを含む総合的なアプローチによって行われます。
5.治療オプション
一般的な治療法には、手術、放射線療法、化学療法、ホルモン療法などが含まれます。
治療計画は個々の患者の状態に基づいて決定されます。
最近では、新しい薬剤が次々と登場し、治療法の細分化や個別化が進んでいます。
例えば、以下のような薬剤が若年性乳がんの治療に用いられる可能性があります。
・エンハーツ(一般名トラスツズマブ デルクステカン)
HER2低発現の進行・再発乳がんに対して、2次治療以降で使用できる抗体薬物複合体(ADC)です。
HER2タンパク質に結合してがん細胞に毒性物質を運び、がん細胞を死滅させます。
・ベージニオ(一般名アベマシクリブ)
ホルモン受容体陽性、HER2陰性の高リスク乳がんに対して、ホルモン療法に併用することで、再発や転移のリスクを低減する分子標的薬です。
CDK4/6というがん細胞の増殖を促す酵素を阻害します。
・リムパーザ(一般名オラパリブ)
BRCA1またはBRCA2遺伝子に変異がある進行・再発乳がんに対して、化学療法に代わる分子標的薬です。
PARPというがん細胞のDNA修復を助ける酵素を阻害し、がん細胞を死滅させます。
・キイトルーダ(一般名ペムブロリズマブ)
PD-L1という免疫チェックポイントに結合して、がん細胞に対する免疫反応を強化する抗体薬です。
トリプルネガティブ乳がんの一部に対して、化学療法に併用することで、生存期間の延長が期待されます。
これらの薬剤は、すべての若年性乳がんに適応するわけではなく、がんの性質や検査結果によって判断されます。
また、副作用や効果の個人差もありますので、担当医とよく相談して治療法を決めてください。
6.サポートとケア
乳がんの治療は身体的および感情的な影響を与える可能性があります。
患者はサポートグループ、心理的なサポート、および医療チームとの協力を検討することが重要です。
※若年性乳がんに関する詳細な情報や最新の治療法については、専門の医療プロフェッショナルに相談することが重要です。
また、乳がんの早期発見と予防のために、定期的な健康チェックや検診も重要です。
若年性乳がん 再発率
若年性乳がんは、ホルモン受容体が陰性であることが多く、ホルモン療法が効かない人が多いという特徴があります。
そのため、再発率が高い傾向があります。
再発率は、乳がんのタイプや進行度、治療法などによって異なりますが、一般的には手術後10年で10%未満とされています。
再発は、術後3年以内に起こることが比較的多いとされています。
家族に若くして乳がんになった人がいるか、母親、姉妹に2人以上乳がんの人がいるような場合は、遺伝的要素の強い「家族性乳がん」の家系である可能性もあります。
その場合は、30代から乳がん検診を欠かさず受け、早期発見につとめましょう。
再発を防ぐためには、手術後の治療や経過観察に従って通院することや、日常的に運動することなどが効果的だといわれています。
再発した場合の治療法は、再発の部位や乳がんの性質によって異なりますが、手術や薬物療法などが行われます。
ホルモン感受性の若年性乳がん
35歳以下の女性に発症する乳がんのうち、女性ホルモンの影響を受けて増殖するタイプの乳がんです。
このタイプの乳がんは、ホルモン療法やLH-RHアゴニストなどの薬物療法が再発予防に効果的だといわれています。
ホルモン感受性の有無は、乳がん細胞の中にエストロゲン受容体というタンパク質があるかどうかで判断されます。
エストロゲン受容体が陽性であればホルモン感受性があり、陰性であればホルモン感受性がないということになります。
ホルモン感受性の若年性乳がんの場合は、ホルモン療法やLH-RHアゴニストなどの薬物療法が再発予防に効果的だといわれています。
LH-RHアゴニスト
LH-RHアゴニストなどの薬物療法とは、乳がんの中には、女性ホルモンの影響を受けて増殖するタイプのものがあるという性質を利用した治療法です。
このタイプの乳がんは「ホルモン感受性乳がん」と呼ばれます。
LH-RHアゴニストは、卵巣からの女性ホルモンの分泌を減らすことで、乳がん細胞の増殖を抑える薬です。
この薬は閉経前の女性に用いられます。
閉経後の女性には、アロマターゼ阻害薬や抗エストロゲン薬などが用いられます。
これらの薬物療法は、乳がんの治療目的として、以下のような場合に行われます。
・初期治療
乳がんを完全に治すことが目的です。
手術や放射線治療の前後に薬物療法を行うことで、再発や転移のリスクを減らすことができます3。
・進行、再発治療
乳がんが他の臓器に転移したり、手術後に再発したりした場合に行われます。
薬物療法によって、がんの増殖を抑えたり、症状を緩和したりすることができます。
若年性乳がん 余命
若年性乳がんとは、40歳未満で発症する乳がんのことです。
若年性乳がんは、一般的な乳がんよりも悪性度が高く、進行が早い傾向にあります。
原因は明らかではありませんが、遺伝的な要因やホルモンの影響などが考えられます。
若年性乳がんの余命や生存率は、乳がんの進行度(ステージ)やタイプ(受容体の有無)によって異なります。
一般的には、ステージが進むほど余命は短くなり、生存率は低くなります。
受容体がある場合は、ホルモン剤や分子標的薬などの治療が有効で、予後が良いとされます。
乳がんのステージは、乳房内のがんの大きさや状態(T分類)、リンパ節への転移の有無や程度(N分類)、他の臓器への転移の有無(M分類)によって0から4まで分けられます。
ステージ0は非浸潤がんで、乳管内にとどまっている状態です。
ステージ4は遠隔転移がある状態で、末期がんと呼ばれます。
乳がんのステージ別の5年生存率は、以下のようになっています。
ステージ0:99.3%
ステージ1:99.0%
ステージ2:93.0%
ステージ3:72.0%
ステージ4:22.0%
これらの数字は、2009~2011年のデータに基づいています。
最近の医療の進歩によって、これらの数字はさらに改善されている可能性があります。
また、これらの数字はあくまで平均的なものであり、個人差があることに注意してください。
若年性乳がんの余命や生存率を上げるためには、早期発見が重要です。
乳がん検診やセルフチェックを定期的に行うことで、がんの発見や治療の機会を増やすことができます。
また、医師の指示に従って治療を受けることや、健康的な生活習慣を心がけることも大切です。