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血球貪食症候群 症状

血球貪食症候群は、免疫系の異常により、自己の血球(赤血球、白血球、血小板)が破壊されてしまう病気です。

主な症状は以下の通りです。

1.貧血症状
赤血球が破壊されるため、貧血による症状が現れます。

めまい、立ちくらみ、動悸、息切れ、全身倦怠感などがみられます。

2.出血症状
血小板が破壊されるため、出血しやすくなります。

鼻血、歯肉出血、点状出血、賓血、吐血、血尿などの出血症状があります。

3.発熱
白血球が破壊されると、感染症に対する免疫力が低下し、発熱を起こしやすくなります。

4.脾腫、肝腫大
脾臓や肝臓で血球が貪食されるため、それらの臓器が腫れる場合があります。

5.黄疸
赤血球が多量に破壊されると、ビリルビンの上昇により黄疸が現れることがあります。

ビリルビンとは、古い赤血球が分解されたときに生じる代謝産物の一種です。

具体的には、以下のような働きがあります。

・赤血球中のヘモグロビンが分解されると「非抱合型ビリルビン」ができる。

・この非抱合型ビリルビンは肝臓で代謝され、「抱合型ビリルビン」に変わる。

・抱合型ビリルビンは水溶性なので、胆汁に混じって体外に排出される。

通常は適度な量のビリルビンが産生、排出されますが、以下のような状況で体内に過剰にビリルビンが蓄積すると、黄疸(皮膚や粘膜が黄色く変色する)の症状が出ます。

・溶血性貧血など、赤血球が過剰に破壊される病態。

・肝機能障害により、ビリルビンの代謝が上手くいかない。

・閉塞性黄疸など、胆汁の排出が阻害される。

ビリルビン値の上昇は肝臓や血液の病気を示唆するので、黄疸があれば血液検査でビリルビン値を確認することが重要です。

発症の契機となる感染症やリンパ腫などの基礎疾患があれば、その症状も合わせて出現します。

重症化すると多臓器不全に陥る危険性があります。

早期発見と適切な治療が重要とされています。

血球貪食症候群 原因
血球貪食症候群の原因は大きく分けて以下の2つに分類されます。

1.免疫異常による原発性(特発性)血球貪食症候群
自己免疫機序の異常により、自己の血球が異物と認識され破壊されてしまうことが主な原因です。

原因は完全には解明されていませんが、遺伝的素因や何らかの環境因子が関与していると考えられています。

2.基礎疾患に続発する二次性血球貪食症候群
以下のような疾患を基礎にもつ場合に、血球貪食症候群を生じることがあります。

・感染症(ウイルス、細菌、原虫など)
血球貪食症候群の原因となる感染症の具体例を挙げます。

【ウイルス感染症】
*EBウイルス感染症

*ヘルペスウイルス感染症

*HIVなどの免疫不全ウイルス感染症

*エコーウイルス感染症

*サイトメガロウイルス感染症

*B型肝炎ウイルス感染症

【細菌感染症】
*肺炎球菌感染症

*インフルエンザ菌感染症

*ブドウ球菌感染症

*レジオネラ肺炎

*Q熱

*ブルセラ症

【原虫感染症】
*マラリア

*バベシア症

*トキソプラズマ症

*リーシュマニア症

*クリプトスポリジウム症

※特に小児では、ウイルス性の上気道炎やEBウイルス感染症の先行感染後に発症する例が多いとされています。

一方、成人では同様の感染症に加えて、HIVなどの免疫不全状態に伴う日和見感染が誘因となることもあります。

基礎疾患となる感染症の重症度や、個人の免疫能の程度によって、血球貪食症候群を発症するリスクが変わってきます。

・リンパ腫などの悪性腫瘍

・免疫疾患(全身性エリテマトーデスなど)

・中毒(蛇毒など)

・代謝異常

・肝臓、胆道系の疾患

基礎疾患により引き起こされた異常な免疫反応が、自己の血球を攻撃することで血球貪食症候群を発症させると考えられています。

原発性、二次性いずれの場合も、脾臓や肝臓、リンパ節などの細網内皮系で異常な貪食反応が起こり、血球が破壊されるのが特徴的です。

日和見感染とは、通常は無害な微生物によって引き起こされる感染症のことを指します。

健康な人の免疫機能が正常であれば、これらの微生物は体内に侵入しても排除されるため感染症を引き起こすことはありません。

しかし、以下のような免疫機能が低下した状態では、これらの微生物が感染症の原因となります。

*AIDS患者などの免疫不全状態

*抗がん剤治療中の患者

*ステロイド長期使用者

*臓器移植後の患者

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血球貪食症候群 治療

血球貪食症候群の治療法について説明します。

1.原因疾患の治療
二次性の血球貪食症候群の場合は、基礎となる原因疾患(感染症、リンパ腫など)を同定し、その治療を優先して行います。

原因疾患が治癒すれば、血球貪食の症状も改善する可能性があります。

2.ステロイド治療
血球貪食症候群の初期治療としてステロイド剤が第一選択となります。

プレドニゾロンやデキサメタゾンなどが使用され、免疫抑制作用により異常な貪食反応を抑えます。

3.免疫グロブリン静注療法
ステロイド不応例には、高用量の免疫グロブリン製剤を静脈内に投与する治療が行われます。

4.化学療法
ステロイド抵抗性の場合、シクロスポリンやエトポシドなどの免疫抑制剤や化学療法剤の使用が検討されます。

5.造血幹細胞移植
難治性の場合、造血幹細胞移植が選択肢となる可能性があります。

根治を目指した強力な治療法ですが、移植関連合併症のリスクがあります。

6.対症療法
貧血に対する赤血球輸血、出血に対する血小板輸血、発熱時の解熱剤投与なども必要に応じて行われます。

治療に際しては、病態を細かく評価し、重症度に応じた段階的な治療が推奨されています。

一方で致死率が高い難治性の病態も存在し、早期の集学的治療介入が重要とされています。

血球貪食症候群 致死率
血球貪食症候群の致死率については、原因や重症度によって大きく異なります。

一般的に、以下のような傾向が報告されています。

【原発性血球貪食症候群】
・小児例では比較的予後良好で、5年生存率が70%程度とされる。

・成人発症例では予後不良で、5年生存率が50%前後とされる。

【二次性血球貪食症候群】
・原因疾患が感染症の場合、適切な治療で50~70%が救命可能。

・リンパ腫や悪性腫瘍に伴う場合は最も予後不良で、致死率が高い。

また、重症度によっても予後は大きく異なります。

・単一臓器不全例では死亡率10%程度。

・多臓器不全を呈する重症例では死亡率50%を超える可能性あり。

早期発見と迅速な治療介入が予後改善に重要であり、播種性血管内凝固(DIC)や中枢神経症状などの合併症を伴う重症例は、特に予後が悪化するとされています。

近年、新規治療薬の登場で予後は改善しつつありますが、未だ致死率の高い難治性疾患と位置付けられています。

症例ごとのリスク評価と集学的治療が求められる疾患です。

血球貪食症候群における新規治療薬として、以下のようなものが注目されています。

1.リツキシマブ
抗CD20モノクローナル抗体で、B細胞を標的とします。

本症の病態にB細胞が関与していることから、リツキシマブをステロイド併用療法に加えることで治療抵抗性例の奏功率が向上することが報告されています。

2. エトポシド
トポイソメラーゼII阻害剤の種類の抗がん剤です。

ステロイド不応性の難治例に対して、初期治療からエトポシドを組み入れた多剤併用療法が有効であったとの報告があります。

3. デフェロキサミン
鉄キレート剤で、ヒドロキシラジカルのスカベンジャーとして作用します。

ステロイド不応例に対する第二線治療薬として、一定の有効性が期待されています。

4. ラパマイシン
mTOR阻害剤の一種で、異常な貪食現象を抑制する作用があると考えられています。

ステロイド抵抗性例への併用で、一部の症例で効果が得られたとの報告があります。

5. 抗TNF-α抗体
TNF-αがマクロファージの活性化を介して本症の発症に関与していることから、抗TNF-α抗体製剤の有効性が期待されています。

このように、従来の治療に加えて新規分子標的薬などが臨床試験で検討されており、難治例に対する治療選択肢が広がりつつあります。

ただし、エビデンスレベルがまだ低いため、症例ごとの慎重な評価が重要とされています。