ウイルスは病気を引き起こす厄介な存在だが、一方で人類進化の根本に深く関わる側面も持つことが分かってきた。
天使のような存在
東京理科大学 竹村政春教授によると、
ウイルスは時々悪魔の側面をさらけ出すが、生物全体の歴史をみてみるとどちらかというと天使の存在だという。
ウイルスに正式に登録されているのが6,590種類、実際は星の数ほどあると考えられている。
小川の水には、単細胞のバクテリア、パンドラウイルスがいる。
バクテリアがパンドラウイルスに感染すると、形が変形してやがて内部から爆発する。
本来ウイルスは、病気を引き起こしたり破壊したりしないという。
ウイルスがアメーバを宿主にするのは、世界中を移動するため。
ウイルスにとって生物は、自分たちが増えるための家なのかもしれない。
ウイルスは自分だけでは増えることはできない。
ウイルスは他の生物に侵入するのは、自分のコピーを作るためであり病気を引き起こすためではない。
本来ウイルスは生き物との共存をはかるもの。健康な人体にも39種類のウイルスが共存しているそうだ。
自然宿主といって、ウイルスと宿主が共生している状態。
出産の仕組み
哺乳類は胎内で成長させて産む。
東京医科歯科大学の石野史敏名誉教授によると、
1億6,600万円前の恐竜時代に、人間の祖先の小動物にウイルスが感染してPEG10という遺伝子が送り込まれた。
PEG10は全く新しい胎盤という臓器を作るための遺伝子として機能している。
進化には垂直進化と水平進化がある。
垂直進化は親から子供へ受け継がれていく進化。
水平進化はウイルスの遺伝子が生殖細胞(精子や卵子)に入り込み受け継がれていく進化。
1億4,800万年前にはRT1という遺伝子が獲得されている。これは脳の進化に関わっているが分かっている。
2億3,000万年前にはSASPase遺伝子を獲得、肌のバリア機能を支える酵素を作り出せるようになった。
海洋生態系の調整役
高知大学 長崎慶三教授によると、
注目したのが赤潮、赤潮は一部のプランクトンが大量発生したもの。
そのプランクトンが栄養や酸素を独占して、魚の大量死など深刻な問題につながりかねない。
この赤潮が解消される時にウイルスが活躍するという。
ウイルスに感染しているプランクトンの割合が増えている現象に気がついた。
実験で、フラスコに赤潮を引き起こすプランクトンを1000匹培養、そこにプランクトンに感染するウイルスを投入。
3日後、海水は透明な状態になった。ウイルスは生態系の調整役を担っている。
ウイルスなしには海洋生態系は考えられないと断言している。
ウイルスはある海洋生物種を絶滅させることはない。