ヒトヘルペスウイルス6(HHV-6)のSITH-1遺伝子は、うつ病の発症に関与するとされています。
東京慈恵会医科大学・ウイルス学講座の近藤一博教授らの研究チームは、「うつ病になりやすい体質」が遺伝する仕組みを、世界で初めて解明しました。
HHV-6のSITH-1遺伝子には、うつ病を引き起こしやすいタイプと引き起こしにくいタイプが存在します。
これは「うつ病になりやすい体質」やその遺伝に関与することが示されています。
SITH-1遺伝子は3種類の繰り返し配列R1、R2、R3に囲まれており、特にR1領域が注目されています。
R1領域には12塩基からなる繰り返し配列が複数種類存在し、その種類や繰り返しの数はSITH-1タンパク質の発現に関係します。
研究では、R1A配列の数が多いほどSITH-1の発現が少ないことが判明しました。
つまり、R1AはSITH-1の発現を抑制する機能があると考えられています。
また、R1Aの繰り返し配列の数が17以下(R1A≦17)になると、うつ病を発症しやすいことが判明しました。
このことは、うつ病患者の約7割でうつ病の発症とR1A≦17のHHV-6が関係し、感染しているHHV-6がR1A≦17だった場合は、うつ病になる率はそうでないHHV-6に感染している場合の約5倍になることを示しています。
さらに、R1A≦17のHHV-6が親から子に伝搬することで遺伝に関係する可能性があると考えられています。
この発見は、染色体の親から子への伝搬によるメンデル遺伝のメカニズム以外にも、親に持続的に感染している常在微生物(マイクロバイオーム)の子への伝搬が遺伝のメカニズムになり得ることを示す世界で初めての発見であり、HHV-6のSITH-1がうつ病の原因となることをさらに確実とする証拠でもあります。
※この発見により、新生児期に「うつ病を起こしにくい」HHV-6をワクチンとして接種するなどの方法で、「うつ病を起こしやすい」HHV-6が親から子に感染することを防御することで、原理的には、うつ病の遺伝を抑制することが可能となると考えられています。
うつ病 予防
うつ病を予防するためには以下のような方法があります。
1.ライフスタイルを見直す
ストレスを抱え込まない、バランスの取れたライフスタイルに近づくことが大切です。
2.完璧主義に注意する
完璧主義の人は、何をするにしても妥協を許さない傾向がありますが、いつでも非の打ちどころがない結果に恵まれるわけではありません。
何か欠点があると、それだけでネガティブな感情を引きずりがちです。
3.食生活のバランスが大事
セロトニンの欠乏がうつ病の原因につながっているという考え方が有力です。
セロトニンは、「トリプトファン」という成分から生成されます。
トリプトファンが多い食品を普段から摂取することが大切です。
トリプトファンが多く含まれる食品は以下の通りです。
・大豆製品:大豆、豆腐、納豆、味噌、しょうゆなど。
・乳製品:チーズ、牛乳、ヨーグルトなど。
・穀類:米など。
・肉類:鶏肉、七面鳥。
・魚類:魚、特にマグロなどの赤身魚。
・種子類:ピーナッツ、カボチャの種、ゴマ、ヒマワリの種。
その他:バナナ、レバー。
これらの食品を日々の食事に取り入れることで、トリプトファンの摂取量を増やすことができます。
ただし、適量を守り、バランスの良い食事を心がけることが重要です。
トリプトファンの1日の摂取目安量
体重1kgあたり約4mgとされています。
したがって、体重60kgの人であれば、1日に約240mgのトリプトファンを摂取することが適切と考えられます。
ただし、これは一般的な目安であり、個々の健康状態や生活習慣により適切な摂取量は変わる可能性があります。
健康に関する懸念がある場合は、医療専門家に相談することをおすすめします。
また、トリプトファンだけでなく、他の必須アミノ酸や非必須アミノ酸もバランス良く摂取することが重要です。
食事だけでバランスの良い摂取が難しい場合、EAAサプリやプロテインを利用するのも一つの方法です。
ただし、サプリメントの摂取については、適切な使用方法や副作用の可能性について理解した上で行うことが重要です。
4.毎日日光浴を心がける
現代人は屋内で過ごすことで日に当たらない生活をすることも増え、その習慣が抑うつ状態を進めてしまう可能性は考えられます。
5.適度な運動
適度な運動はストレス解消に効果的です。
6.良質な睡眠
睡眠はストレスに対して有効で、回復効果があります。
7.ストレス発散
自分に合ったストレス発散の手法を身に付けることが大切です。
8.定期的にリラックス
定期的にリラックスタイムを設けて、心と体の緊張をほぐしましょう。
9.考え方を見直す
自分の考え方を客観的に分析して、完璧主義に陥っていないか見直すことが大切です。
※これらの方法は一部ですが、うつ病の予防には有効です。
ただし、自分自身の体調や感じ方を大切にし、必要ならば専門家の意見を求めることも重要です。