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肺高血圧症 診断基準

肺高血圧症は、肺動脈圧が異常に上昇する重篤な疾患です。

肺高血圧症の主な症状は以下のようなものがあります。

・息切れ

・易疲労感

・胸痛

・めまい

・失神

・下腿浮腫

初期には労作時の息切れが最も一般的な症状です。

これは肺動脈圧上昇に伴う右心負荷増大が原因です。

疾患が進行すると、安静時にも息切れがみられるようになります。

さらに重症化すると、右心不全、腹水などが出現します。

正確な診断は重要で、一般に以下の基準が用いられています。

1.安静時に測定した平均肺動脈圧が25mmHg以上であること。

2.肺動脈楔入圧(肺静脈圧に相当)が15mmHg以下であること。

これにより、左心不全による肺高血圧を除外する。

3.肺血管抵抗が3Wood単位以上に上昇していること。

4.他の疾患(先天性心疾患、間質性肺疾患、肺血栓塞栓症など)による二次性肺高血圧でないこと。

診断には、右心カテーテル検査による肺動脈圧と肺血管抵抗の測定が必須です。

また、心エコー、肺機能検査、CTなどの画像検査で原因疾患を除外します。

治療抵抗性で予後不良の場合は、肺動脈閉塞性病変の有無を確認する必要があります。

そのためには、肺血管造影やAVTなどの検査が追加で行われます。

肺高血圧症は早期発見と適切な治療が重要な疾患で、確定診断には複数の検査が必要とされています。

AVTとは、acute vasoreactivity testの略で、肺血管反応性検査のことを指します。

この検査は、肺高血圧症患者に対して肺血管拡張薬を投与し、その反応性を評価するものです。

具体的には以下の手順で行われます。

1.右心カテーテル検査を行い、基礎値となる肺動脈圧、肺血管抵抗値を測定する。

2.短時間作用性の肺血管拡張薬(通常はNO吸入やエポプロステノール静注)を投与する。

3.投与後、一定時間経過した時点で再び肺動脈圧、肺血管抵抗値を測定する。

4.肺血管抵抗値が基礎値から20%以上低下した場合を肺血管反応性陽性と判定する。

肺血管反応性陽性の患者は、Ca拮抗薬などの血管拡張療法に反応しやすく、予後が比較的良好とされています。

一方、陰性例は予後不良で、肺移植の適応になる可能性があります。

このように、AVTは肺高血圧症の病態評価と治療方針決定に重要な検査なのです。

肺高血圧症 原因
肺高血圧症の原因は多岐にわたります。主な原因は以下のように大きく分類されます。

1.肺動脈性肺高血圧症(PAH)
・遺伝性PAH

・特発性PAH

・他の疾患に関連したPAH(膠原病、HIV感染症、肺疾患、肝疾患など)

・薬剤やトキシン曝露に関連したPAH

2.肺疾患に起因する肺高血圧症
・慢性閉塞性肺疾患(COPD)

・間質性肺疾患

・睡眠時無呼吸症候群

3.慢性血栓塞栓性肺高血圧症(CTEPH)
・再発性肺血栓症が原因

4.左心疾患に起因する肺高血圧症
・左心不全

・弁膜症

5.肺の血管病変を伴う疾患に関連した肺高血圧症
・肺静脈閉塞性病変

・肺毛細血管腫症

遺伝的素因、他の基礎疾患の存在、薬剤曝露などが原因となり、肺血管リモデリングが進行することで肺動脈圧が上昇します。

中でも遺伝性PAHや特発性PAHでは、明確な原因が特定できない場合が多く、肺血管リモデリングの分子機序の解明が課題となっています。

早期の原因特定と適切な治療介入が重要であり、原因に応じた層別化された対応が求められます。

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肺高血圧症 最新治療

肺高血圧症の最新治療としては、以下のような新しい治療法が注目されています。

1.新規経口薬
・可溶性グアニル酸シクラーゼ(sGC)刺激薬
*リオシグアト、ラマシログ酢酸塩が承認

*NOとは別の経路でcGMPを増加させ、血管拡張作用

・IP受容体作動薬
*セレキシパグが承認

*プロスタサイクリン受容体を介した血管拡張作用

2.肺動脈デナーベーション療法
*カテーテルを用いて肺動脈外膜の交感神経を遮断

*肺血管収縮を抑制し、肺血管抵抗を低下

*カテーテル治療のため低侵襲

3.可溶性グアニル酸シクラーゼ酸化還元酵素(sGC oxidase)阻害薬
*sGCの活性化を介して血管拡張作用

*現在後期臨床試験段階

4.PDGF受容体阻害薬
*肺動脈平滑筋細胞の異常増殖を抑制

*イマチニブが有効性を示す臨床試験結果

5.遺伝子治療
*BMPR2遺伝子異常がPAHの原因の一つ

*遺伝子導入による分子標的治療が期待される

こうした新規治療薬は既存薬との併用療法が検討されており、効果的な複合治療の確立が進められています。

また、肺移植治療なども選択肢の一つとなっています。

肺高血圧症 寿命
肺高血圧症は重症化すると生命予後が不良となる恐れがある疾患です。

適切な診断と治療介入が遅れると、右心不全に陥り、予後は極めて不良となります。

しかし、近年の新規治療薬の登場や集学的治療による予後改善効果によって、肺高血圧症患者の生存期間は延長しつつあります。

一般的な予後データとしては、

・特発性肺動脈性肺高血圧症(IPAH)の場合、未治療で診断から平均生存期間は2.8年。

・適切な治療を受けた場合
1年生存率80~90%

3年生存率59~75%

5年生存率45~65%

・CTEPH(慢性血栓塞栓性肺高血圧)の場合は外科治療により良好な予後が期待できる。

生命予後は、発症原因、診断時の重症度、治療への反応性などに大きく左右されます。

早期発見・早期治療介入が重要視されています。

最新の集学的治療では、functional class やリスク層別評価に基づいた治療最適化により、さらなる長期予後の改善が期待できます。

生活習慣の是正なども含めた総合的な管理が推奨されています。

functional classは、肺高血圧症の重症度を示す指標で、日本語では「機能的重症度分類」と訳されています。

具体的には、以下の4段階に分類されます。

I 度: 身体活動を制限されることなく、普通に活動できる

II度: 軽労作時に息切れ、疲労感などの症状が出るが、安静時には症状がない

III度: 家事労作以上で症状が出る。安静時でも症状がある

IV度: 安静時でも症状があり、どんな身体活動も制限される

この機能的重症度分類は、治療方針の決定や予後予測に利用されています。

重症度が高いほど予後は不良となる傾向にあります。

診断時だけでなく、経過観察時にも機能的重症度を評価し、症状の変化に応じて治療内容を適宜調整することが推奨されています。

患者の自覚症状と並行して、種々の検査データも考慮して総合的に判断する必要があります。