〇アトピー性皮膚炎
アトピー性皮膚炎の主要な症状はかゆみです。
皮膚に湿疹ができ、赤くなったり、ジクジクしたり、皮膚が細かく剥がれたりします。
この症状は体の色な部分に現れますが、特に顔や首、関節部分に出やすく、体の左右対称に現れることが特徴です。
また、症状は良くなったり悪くなったりを繰り返します。
アトピー性皮膚炎の皮膚は通常の皮膚に比べて乾燥しており、バリア機能が低下しています。
そのため、外部からの刺激を受けやすくなります。
刺激を受けると免疫細胞が反応し、炎症を引き起こす物質を放出します。
これが知覚神経に到達するとかゆみが生じ、炎症を引き起こす物質はかゆみだけでなく皮膚のバリア機能も低下させます。
〇基本の治療 塗り薬の使用
アトピー性皮膚炎の基本的な治療はステロイドの塗り薬です。
ステロイドは免疫の活性化を抑え、炎症を鎮める効果があります。
症状が改善しない場合、塗り薬の量が不足している可能性があります。
適切に使用しても改善しない重症の患者は1~2割であり、8割は塗る量が不足していると考えられます。
〇ステロイド塗り薬の副作用
多くの人が心配するのはステロイドの飲み薬で起こる全身の副作用ですが、塗り薬は塗った部分にのみ効果があり、全身への影響はほとんどありません。
塗り薬の副作用として皮膚が薄くなったり、血管が浮き出て見える(血管拡張)ことがありますが、適量を使用する分にはほとんど心配ありません。
ただし、重症で長期間使用する場合は注意が必要です。
万が一副作用が出た場合は、薬の種類を変更するなどの対策が可能ですので、皮膚科医に相談しましょう。
〇塗り方のポイント
塗る量は人差し指の第一関節から指先までの量が手のひら2枚分の広さをカバーする目安です。
優しく塗り伸ばし、ゴシゴシこすり込まないようにしましょう。
皮膚は平らではなくデコボコしているため、すり込むと炎症が強い部分に薬が届かないことがあります。
皮膚のしわに沿って優しく塗り伸ばすことが大切です。
〇塗り薬の正しい塗り方のセルフチェック
1.薬を塗った部分にティッシュペーパー1枚をくっつける
2.腕を垂直に立てる
ティッシュペーパーが落ちずに腕にくっついていれば適量です。
くっつかずに落ちた場合は薬の量が不足しています。
〇新しいタイプの塗り薬
最近では「デルゴシチニブ」と「ジファミラスト」という新しいタイプの塗り薬が登場しています。
これらの薬は軽症から使用でき、デルゴシチニブは生後6か月以上、ジファミラストは生後3か月以上の子供にも使えます。
ステロイドと同様に免疫細胞に作用し、その反応を抑える点では共通していますが、新しい薬はよりピンポイントに作用します。
デルゴシチニブは「JAK阻害薬」で、免疫細胞内のJAKに作用し、過剰な炎症物質の生成を抑制します。
〇新しいタイプの薬の副作用
新しい薬の副作用にはニキビやヘルペスなどの感染症がありますが、ステロイドの塗り薬で起こるような皮膚の薄さの副作用はありません。
顔などの皮膚の薄い部分にも長期間使用できます。
〇薬の使い分け
炎症が強い部分にはまずステロイドの塗り薬を使用し、強い炎症を早く鎮めます。
炎症が弱まったら新しいタイプの塗り薬で炎症を抑え、皮膚症状を改善します。
〇塗り薬の使用期間
治療を始めたら1日2回毎日塗り、症状が良くなると1日1回に減らします。
治ったように見える皮膚でも目に見えない炎症が潜んでいるため、すぐに薬をやめずに「プロアクティブ療法」として頻度を減らしながら薬を塗り続けます。
皮膚の状態を見ながら頻度を減らす際は自己判断せず、皮膚科医と相談しましょう。
自己判断で頻度を減らすと悪化する可能性があります。
アトピー性皮膚炎の治療には時間がかかることもありますが、しっかりと治療を行うことで症状を改善できます。
新しい薬も登場しているため、困ったことがあれば皮膚科医に相談しましょう。
アトピー性皮膚炎 新しい治療
アトピー性皮膚炎の治療法には、塗り薬だけでなく、「注射薬」や「飲み薬」も含まれています。
これらの「注射薬」や「飲み薬」を使うには、アトピー性皮膚炎の重症度が重要なポイントとなります。
軽症の場合、皮膚の赤みや乾燥が軽度で、面積に関係なく存在します。
中等症では、体の10%未満に強い炎症を伴う湿疹が見られます。
炎症や湿疹の面積が10%以上になると、重症または最重症となり、「注射薬」や「飲み薬」が使用できるようになります。
◎子どもにも使用できる注射薬「デュピルマブ」
2018年に承認されたデュピルマブは、最初は15歳以上の患者に使われていた生物学的製剤の注射薬でしたが、2023年9月からは、生後6か月以上の子どもにも使用できるようになりました。
デュピルマブは炎症を引き起こす物質をブロックするため、アトピー性皮膚炎の症状の改善が期待されます。
1.注射の頻度
注射の頻度は年齢や体重によって異なります。
30kg未満の子どもは4週間に1回、30kg以上の子どもは2週間に1回、大人も2週間に1回注射を受けます。
2.注射の効果
多くの人が治療開始から1か月程度で効果を感じ始め、4か月後には約40%の患者で皮膚症状がほぼ改善すると報告されています。
注射の効果は高いですが、治療を中止すると症状が再発する可能性があります。
治療の継続や中止については皮膚科医と相談しながら決めることが重要です。
3.注射の副作用
重大な副作用はほとんどありませんが、一時的に結膜炎や顔の皮膚炎が悪化することがありますが、通常は時間の経過とともに改善します。
4.塗り薬と併用して使用するのがポイント
注射薬は塗り薬の治療に追加して使用されます。
塗り薬に副作用がない場合は、併用を続けることが推奨されます。
5.子どもの治療の重要性
アトピー性皮膚炎は大人になると軽快することが多いですが、早期治療は非常に重要です。
特に子どもは掻きむしることで感染症を引き起こすリスクがあり、早めの対処が必要です。
【A君7歳の例】
A君は2歳でアトピー性皮膚炎と診断され、ステロイドの塗り薬などで治療していましたが、かゆみは治まりませんでした。
2023年に子どもにも注射薬が使えるようになり、A君は治療を受けることに決めました。
4週間に1回の頻度で注射を打ち、治療開始から4か月後には顔の皮膚症状が改善し、夜もぐっすり眠れるようになりました。
◎その他の注射薬
アトピー性皮膚炎の治療に使われる注射薬は4種類あります。
「デュピルマブ」のほかに、「ネモリズマブ」「トラロキヌマブ」「レブリキズマブ」があります。
*注射薬の使い分け
「デュピルマブ」は最初に登場した注射薬で、現在子どもに使える唯一の薬です。
「トラロキヌマブ」や「レブリキズマブ」もアトピー性皮膚炎の症状に効果がありますが、「ネモリズマブ」は特にかゆみを抑える効果が高い注射薬です。
薬の効果や注射の頻度は異なるため、皮膚科医と相談しながら適切な薬を選びましょう。
◎飲み薬による治療
「JAK阻害薬」と呼ばれる飲み薬には、「バリシチニブ」「ウパダシチニブ」「アブロシチニブ」の3種類があります。
これらは比較的新しい薬で、免疫細胞の中のJAKに作用し、炎症を引き起こす物質の生成を抑えることで皮膚症状を改善します。
1.塗り薬との違い
塗り薬は塗布した部分にのみ効果を発揮しますが、飲み薬は全身を巡るため、全身の炎症細胞を抑え、より強力にかゆみなどの症状を抑える効果が期待できます。
2.使用年齢と服用頻度
「バリシチニブ」は2歳から、「ウパダシチニブ」「アブロシチニブ」は12歳から使用可能で、いずれも1日1錠を服用します。
3.効果と副作用
比較的早く効果が現れ、服用開始から2日後にかゆみが軽減されることがありますが、結核や肺炎、肝機能障害などの副作用に注意が必要です。
服用前や服用中には定期的な検査が推奨されます。
◎注射薬や飲み薬の選択
医師と相談しながら、自分に合った薬を選ぶことが重要です。
薬の選択には金銭面や副作用、効果を考慮する必要があります。
短期間試してみながら最適な薬を見つける方法もありますので、皮膚科医とよく相談して治療法を決定しましょう。
アトピー性皮膚炎 スキンケア
アトピー性皮膚炎の治療では、ステロイドの塗り薬が基本ですが、スキンケアとして保湿も非常に重要です。
ステロイドは炎症を抑える効果がありますが、保湿作用はありません。
アトピー性皮膚炎の皮膚は乾燥しやすく、バリア機能が弱いため、保湿剤でその機能を補う必要があります。
保湿剤を使うと、皮膚の水分を保持し、外部からの刺激を防ぐことができます。
1.保湿剤の種類
アトピー性皮膚炎でよく使われる保湿剤をいくつか紹介します。
・ヘパリン類似物質
保湿効果が高く、ベタつきが少ないが、種類によってはわずかににおいがある。
・尿素
保湿効果が高く、ベタつきが少ないが、刺激を感じる場合がある。
・白色ワセリン
保湿というより皮膚の保護を行い、ベタつくが、刺激はほとんどない。
季節によって保湿剤のタイプを変えることもできます。
例えば、夏はローションタイプ、冬は軟膏やクリームが適しています。
また、ひじなど硬い皮膚には、尿素軟膏が効果的です。
ぬりやすさや保湿効果を確認し、自分に合った保湿剤を見つけましょう。
2.保湿剤の適量
クリームや軟膏は人差し指の第一関節の端から先端に出した量が手のひら二枚分、ローションタイプは一円玉大の量が手のひら二枚分になります。
3.塗り方のポイント
アトピー性皮膚炎の治療では、ステロイドの塗り薬と保湿剤を併用します。
基本的には保湿剤を先に塗り、その上からステロイドを必要な部分に重ねます。
保湿剤の上からでも薬の成分は皮膚に浸透し効果を発揮します。
順番が逆になっても問題はありません。
4.保湿剤を塗るタイミング
できれば1日3回、特にお風呂の後に塗ることが推奨されます。
入浴後は10分以内に塗るのが効果的です。
皮膚の表面の「皮脂膜」を洗い流した後、水分の蒸発が激しくなるため、入浴後すぐに保湿剤を塗ることが重要です。
5.生活の中での悪化対策
・汗
汗をかいたら早めに拭き取り、汗をよく吸収する素材の服を着て、汗をかいたら着替えるようにしましょう。
シャワーを浴びた後は保湿剤をしっかりと塗りましょう。
・お風呂
お風呂の温度は38~40度が適切です。
体を洗うときは石鹸の泡をのせて流すだけで汚れは取れます。
入浴剤も、かゆみが増さないものであれば使っても問題ありません。
・紫外線
日焼けは避けるべきですが、日光に当たること自体はアトピー性皮膚炎に良い影響を与えることがあります。
難治性のアトピー性皮膚炎には紫外線療法が有効です。
・服
綿などの柔らかく、汗の吸収性に優れた素材がおすすめです。
チクチクする素材や縫い目のあるものは避けましょう。
6.かゆいときの対策
かゆみを抑えるためには抗ヒスタミン薬が処方されることがありますが、効果が弱いこともあります。
その場合、冷やすことが有効です。
冷たいおしぼりなどをかゆい部分に当てて冷やすと、かゆみが和らぎます。
ただし、保冷剤を直接皮膚に当てないようにし、タオルなどに包んで短時間使用してください。
7.知覚神経は元に戻る
治療を継続してかゆみや皮膚症状が改善すると、伸びた知覚神経も元に戻ります。
ただし、回復には時間がかかるため、見た目の改善が見られても治療を続けることが重要です。
薬をやめるタイミングは医師と相談して決めてください。


