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ASD 初期症状

ASD(自閉症スペクトラム障害)の初期症状は、個人差が大きく多様です。

しかし、一般的には以下のような行動の特徴が見られることが多いといわれています。

【言語、コミュニケーションの問題】
・言葉の発達の遅れ

・発語がない、発語が遅れる

・他者と目を合わせたり、指さしをほとんどしない

・単語の意味を理解できない

・会話のキャッチボールができない

【社会性の問題】
・人の気持ちを共有できない

・相手の気持ちが読めない

・人見知りが激しい

・周りと遊ぶ興味がない

【行動の問題】
・同じ動作を繰り返す

・特定のおもちゃや物にはまる

・変化を嫌う

・感覚刺激に過敏または鈍感

このような症状が1-3歳頃から現れ始めますが、重症度によってはさらに幼い頃から気づく場合もあります。

早期発見と適切な療育が大切とされています。

症状は人それぞれ異なり、軽症から重症までスペクトラムが広がっています。

ASD 遺伝的要因
ASDには遺伝的要因が大きく関与していると考えられています。

【遺伝的要因の根拠】
1.双生児研究
・一卵性双生児の場合、両方がASDである割合が高い

・二卵性双生児の場合も、一般の兄弟よりASD発症率が高い

2.家族内発症率
・ASD児の同胞にASDが発症する割合が一般より高い

・親がASDの場合、子どもがASDになる確率が高まる

3.関連遺伝子の同定
・ゲノム解析により、ASDに関連する可能性のある遺伝子が複数同定されている

・神経伝達物質、シナプス形成、脳の発達などに関わる遺伝子

※ASDの発症に関連があると考えられている主な遺伝子を具体的に挙げますと、

【神経伝達物質に関わる遺伝子】
*NRXN1(ニューロキシン1)
シナプス形成や機能に関与。変異があるとASDリスクが上がる。

*SLC6A4(セロトニントランスポーター)
セロトニン再取り込みを調節。変異は情動や社会性に影響。

*GABR遺伝子群
GABAは抑制性神経伝達物質で、この遺伝子群の変異がASDリスクを高める。

【シナプス形成に関わる遺伝子】
*SHANK3
シナプスのスカフォールドタンパク質をコードする。欠失がASDに関連。

*NLGN3/4X
シナプス接着分子をコードする。機能変異がASD原因の一つ。

【脳の発達に関わる遺伝子】
*TSC1/2
mTOR経路を制御し、神経細胞の移動や分化に関与。変異はASDリスク上昇。

*FMR1
フラジールXの原因遺伝子で、神経可塑性の調節異常がASDにつながる。

等々です。

これらの遺伝子の変異が、シナプス伝達、神経回路形成、脳の発達に影響を与え、ASD発症の一因になると考えられています。

【遺伝的要因の特徴】
・単一の原因遺伝子は特定されておらず、多数の遺伝子が関与

・遺伝子変異の有無だけでなく、環境要因も発症に影響

・遺伝子変異の種類や組み合わせによって、症状の広がりが生じる

したがって、ASDの発症には遺伝的素因と環境要因が複雑に関係していると考えられています。

詳細な遺伝的要因は解明が進行中の状況です。

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ASD 環境性要因

ASDの発症には、遺伝的要因だけでなく様々な環境要因も関与していると考えられています。

主な環境性要因は以下の通りです。

【周産期の環境要因】
・母体の高齢出産

・母体への薬剤投与(特にあるタイプの向精神薬)
主に問題視されているのは、妊娠中の母体が服用した「antigas(抗ドパミン作用のある薬剤)」と呼ばれる薬です。

代表例:クロザピン、リスペリドンなどの非定型抗精神病薬

これらの薬剤は、ドパミンD2受容体を強く遮断する作用があります。

なぜリスクとなるかについては、以下の理由が考えられています。

1.ドパミン系の機能不全
胎児期のドパミン系が適切に働かないと、大脳皮質の発達に重大な影響が出る可能性がある。

2.神経発達への影響
ドパミン系は神経細胞の移動、増殖、シナプス形成など、神経発達の重要なプロセスに関与している。

3.遺伝的素因との相互作用
ドパミン関連遺伝子の変異など、遺伝的リスクと相まって発症しやすくなる可能性。

※ただし、服用量や時期によってはリスクが低い場合もあり、一概に危険とはいえません。

治療上の必要性などを総合的に勘案する必要があります。

2023年時点では服用と発症リスクの因果関係は確定的ではありませんが、注意が促されている薬剤のタイプです。

・母体の感染症(風疹、水疱瘡など)

・帝王切開分娩

・低出生体重児

・低酸素症

これらの周産期のリスク要因が、脳の発達に影響を与える可能性がある。

【化学物質への曝露】
・重金属(水銀、鉛など)

・環境ホルモン

・農薬

・大気汚染物質

胎児期や乳児期に化学物質に曝露されると、神経発達に障害が起こるリスクが高まる。

【社会環境的要因】
・親の年齢が高い

・親の精神疾患の有無

・虐待などの有無

・家庭の経済状況

出生前後の環境が脳の発達に影響を及ぼす可能性がある。

これらの環境要因が遺伝的素因に拍車をかける形で、ASD発症の一因になっているのではないかと考えられています。

しかし、環境要因の解明はまだ初期段階にあり、更なる研究が必要とされています。

ASD 大人治療
ASDの大人の方への治療については、以下のようなアプローチが行われています。

【心理療法】
・認知行動療法(CBT)
マインドフルネスなどを取り入れ、認知の歪みを修正し、適応行動を身につける。

・ソーシャルスキルトレーニング
コミュニケーション能力や対人スキルを向上させる訓練。

・ストレスマネジメント
ストレス耐性を高め、不安や興奮を抑える方法を身につける。

【行動療法】
・応用行動分析(ABA)
好ましい行動を強化し、問題行動を減らす技法。大人に合わせて調整。

・TEACCH
視覚的手がかりを使い、構造化された環境で生活スキルを学ぶ。

【薬物療法】
・向精神薬の使用
気分安定剤、抗うつ薬、抗不安薬などを症状に合わせて使用。

ただし、効果は限定的で副作用にも注意が必要。

【生活支援】
・就労支援、社会適応訓練

・生活ケア、グループホーム

・ペアレントトレーニングなど家族支援

ASDの症状は一生続くため、年齢に合わせた継続的な支援が重要です。

療法の組み合わせで、可能な限り生活の質を高める努力がなされています。