早期発見 進化する技術
女性の9人に1人が乳がんになるといわれている。乳がんは早期発見できれば9割は治るがんである。
しかし乳がん検診の受診率は50%弱とまだまだ低い。新しい検査法もできて検査の選択肢が広がっている。
セルフチェックで発見できる乳がんの多くはしこりが2cm以上といわれている。
乳がん検診であれば、4分の3以上ががんの大きさ2cm以下を発見できることが多いという。
早期発見のためには40歳を過ぎたら2年に1回乳がん検診(マンモグラフィー検査)を受けることが推奨される。
自治体によっては超音波検査も一緒に行うこともある。石灰化、しこりなどを確認する。
石灰化の多くは良性、大きさが不揃い、棒状・針状の場合は悪性の疑いがある。
マンモグラフィー検査の被ばくの健康被害はほとんどない。若い人のほうが線量の影響を受けやすい。
乳がんにかかりにくい35歳以下は検査のメリットが低いと考えられている。
若い女性は高濃度乳房が多いため超音波検査が推奨されている。
マンモグラフィー検査+超音波検査では乳がん早期発見1.5倍という報告もある。
新しい検査として「乳房専用PET」がある。見られない、触られない、痛みなしという特徴がある。
がん細胞に取り込まれる放射性試薬を注射して調べる。
「特殊なMRI」磁場を使用、造影剤なし、被ばくなし、痛みなし。
いずれも自費の検査。
家族(3親等以内)に乳がんの血縁者がいる場合は、一番若く発症した人の年齢より5~10歳若くから検診を行けた方がいい。
遺伝性乳がんの人は、25歳から専用検診プログラムがある。
BRCA1、BRCA2という遺伝子変異がある場合乳がんを発症しやすい。
全乳がんの約5%は遺伝性乳がん。
遺伝カウンセリング外来、遺伝性腫瘍外来などで遺伝学的検査(血液検査)を受けることができる。
ブレスト・アウェアネス
乳房の状態に関心を持ち乳房を意識する生活を心がける。
1.月1回乳房にしこりや変形がないかチェック。
入浴時に石けんをつけて行うと変化を見つけやすい。
乳がんのしこりは、くるみのように固くゴツゴツした感触。
良性のしこりは、グミのように柔らかい。
気になるしこりがある場合は病院で検査をすることが推奨される。
2.変化に気をつける。
・以前なかったしこりがある。
・乳首から血液のような分泌液。
・乳首のただれ。
・乳房の皮膚にへこみ、ひきつれ。
3.変化に気がついたらすぐ病院へ行く
4.40歳になったら2年に1回乳がん検診
乳がんの薬の治療
【早期がん】
手術 → 薬で再発予防
抗がん剤が必要なタイプ 抗がん剤 → 手術
<乳がんの薬>
1.ホルモン剤
治療期間:通常5年、リスクが高い場合7~10年
タキモシフェン
閉経後
アロマターゼ阻害薬7~10年使用
副作用
ほてり、のぼせなどの更年期の症状
関節痛
骨粗しょう症(閉経後の薬)
※副作用が酷い人は、漢方薬や他のホルモン剤の変更
2.抗がん剤
治療期間:3~6か月
主な副作用
吐気、脱毛、下痢、口内炎、白血球減少
※効果の高い吐気止めがある。
G-CSF製剤:白血球を増やし発熱を抑える。
3.分子標的薬
抗HER2薬
治療期間:再発予防 約1年
主な副作用:初回点適時の発熱、悪寒、心機能の低下、下痢
新しい分子標的薬
サイクリン依存性キナーゼ阻害薬
(CDK4/6阻害薬)
再発リスクが高い場合
手術後
抗がん剤 ホルモン剤
+
新しい分子標的薬 2年間服用
↓
再発 3割減る
<乳がんのたんぱくを調べる>
女性ホルモン受容体
HER2
Ki67
<乳がんのタイプ>
ルミナルA
ホルモン剤
ルミナルB
ホルモン剤+抗がん剤
ルミナルHER2
ホルモン剤+分子標的薬+抗がん剤
HER2陽性
分子標的薬+抗がん剤
トリプルネガティブ
主に抗がん剤
【進行がん】
全身に効果のある薬で治療。
新しい薬
抗体薬物複合体
HER2分子標的薬と抗がん剤を結合させた薬
正常細胞に影響しにくい、副作用がなくがんをたたく。
HER2陽性で進行、再発の乳がんに使用される。
再発後、2番目に使用→ 従来の薬より効果が高い。