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ひびを勝手に治すコンクリートとは?

自己治癒コンクリート
日本中で使われているコンクリートの劣化が問題になっています。従来は埋めたりとかコンクリートを足したりして補修していました。

ところが、1か月もすればひびが塞がってしまう自己治癒コンクリートがオランダで開発されました。国土の1/4が海面より低いオランダでは、水路の下に高速道路が通るといった不思議な光景が見られるといいます。

そんなオランダでは土木の研究が盛んだといいます。デルフト工科大学で開発されたのが、自己治癒コンクリートです。2006年に自己治癒素材の大規模プロジェクトガ始まり、コンクリートにバクテリアを使うことが検討されました。

実はバクテリアの中に石灰岩(炭酸カルシウム)を生成するものがいて、それがひびを埋めてくれればコンクリートの自己治癒が可能かもしれないというアイデアから研究が始まったといいます。

好アルカリ性バシラス属というバクテリアが、海がらや珊瑚の成分である炭酸カルシウムを作るといいます。コンクリートの中にそのバクテリアだけを入れても餌がないので直ぐ死んでしまったそうです。

その餌を見つけるのに試行錯誤したといいます。最終的に辿り着いたのは、バクテリアと餌を生分解性プラスチックでコーティングした粒状のものを開発したといいます。

コンクリートの中にその粒を混ぜます。この状態は酸素もなくバクテリアとって極限状態なので、粒の中で休眠するということです。そこにひびが入ると、水と酸素が流れ込むので目覚めたバクテリアが餌を食べ始めます。

すると、炭酸ガスと炭酸カルシウムを排出します。こうしてできた炭酸カルシウムがキズを埋めていくのです。すっかりキズが治ると酸素がなくなるので、バクテリアは再び休眠するといいます。しかもバクテリアはこの状態で200年生存可能といいますからとても良いアイデアですね。

現在日本では、社会基盤を担うコンクリートの構造物の老朽化によって補修費用が膨らんできているといいます。この技術によってコンクリート構造物の長寿命化と補修費用の低減に役立てていければと、日本のコンクリートメーカーも研究を進めています。

自己治癒セラミックス
現在飛行機のジェットエンジンは金属で作られています。その一部熱風を排気して動力に替えるタービンの羽に、軽くて強い自己治癒素材のセラミックスを使うというのです。

これが実現すれば、自動車や発電所の部品にも導入でき大幅な二酸化炭素の削減に繋がると期待されています。陶器は実は小さい亀裂が表面に沢山あって、それが原因で落ちると割れてしまいます。

それで、小さい亀裂を未然に直したいというのが自己治癒セラミックスになるといいます。1000℃x1分以内で直るような材料を、材料研究機構で作っているといいます。

飛行機のエンジンの効率を一番決めるのが後ろのタービン部の温度になるといいます。国内線の場合飛んでいる時間は約1時間位なので、小さな亀裂が発生しても短時間で直して着陸に備えることがでるように研究が進められています。

この素材の素晴らしい点は、強度も回復するというところです。セラミックスの強度は結合の状態よりも、中にある小さな欠陥の大きさで決まるといわれています。亀裂を入れるとそれが一番大きな欠陥になるのですが、それさえ直っていれば力が加わった場合、他の場所から壊れるのだそうです。

セラミックスが治癒するメカニズム
ひびが入るとそこに酸素が流れ込みます。それが炭化ケイ素との化学反応で二酸化ケイ素になります。この二酸化ケイ素に少しだけアルミナが混じるとどろっとしたガラス状になるといいます。

このどろっとしたものがひびの隅々まで満たします。でもまだひびは弱い状態です。その後このどろっとした二酸化ケイ素が結晶化することで強度が回復するといいます。

治癒する時間が短縮できたのは、アルミナの代わりに酸化マンガンを少し入れると、新たなガラスの性質になってより低い温度でひびを埋めやすくなるということが分かったからです。

アルミナの場合で1000時間、酸化マンガンにすると1分間で治癒するといいます。研究者は、人間の骨折が治る仕組みをヒントにこの開発に成功したといいます。

タービンの羽をセラミックスに替えた場合、燃費が15%位改善すると試算されています。燃費に換算すると、世界で1年間に30兆~40兆円分の燃費が改善できるようになるのだそうです。