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掻けば掻くほど痒くなるのは何故?

痒みとは、「掻きたい衝動を引き起こす不快な感覚の総称」と国際的に定義されているといいます。

痒みなんて無い方が良い?掻くとは、皮膚上の異物を排除し体を守る行為と考えられます。痒みはそのきっかけを作るために必要なものといわれています。

只異物を排除する以外の痒み、例えばかさぶたです。本当は掻かなくてもいいのに、何度も掻いて出血してまた新しいかさぶたができてしまうなど、かさぶたの痒みは難しい。解明されていないそうです。

このように痒みには謎が多いようです。以前は痒みは「軽い痛み」といわれていたといいます。最近になって、痒みは痛みと違うとなりここ20年で一気に研究が進んできたといわれています。

【検証実験】
蚊に刺された痒みをどうすれば抑えられる? 蚊の痒みを10とした場合
1.縄跳び   2 運動覚
2.ピンセット 5 痛覚
3.テープ   6 触覚
4.ドライヤー 2 温度覚
5.氷     4 温度覚

※脳は複数の感覚が同時に入ると優先順位をつけるので、痒みと何か他の感覚を与えると痒みは抑えられると考えられています。
①運動覚
②触覚
③振動覚
④痛覚
⑤温度覚
⑥痒みの感覚

脳科学の視点から
柿木隆介さんのチームが痛みとは異なる痒みをを感じる脳の部位を特定したといいます。痛みでは扁桃体、痒みではけつ前部、それぞれ別の場所が活動していることを突き止めたといいます。

掻いて気持ち良い時は、報酬系、快楽中枢といったギャンブルで大当たりした時に活動する脳の場所と同じだといいます。痒い所を掻く=報酬、強烈な記憶になっているので止められない。

【痒みを抑制する実験】
痒み物質ヒスタミンを皮膚に塗り電極で刺激する。tDCS(直流電気刺激装置)で、脳の感覚視野に1mAの微弱な電気刺激を与える。

30秒毎に痒みの程度を質問する。これを繰り返して検証した結果、痒み知覚の減少と持続時間の短縮が明らかになったといいます。

このことから、全く副作用のない弱い電気刺激で脳を刺激して痒みを抑えられることが分かります。将来的には家庭で痒みの電気治療ができるようになるかもしれません。

薬の開発
アトピー性皮膚炎の患者は神経が皮膚の表面近くまで出てきていて、痒みに過敏になることが分かってきています。マウスを使った実験で、神経が伸びるのを抑える物質を発見したといいます。

それはセマフォリン3A(神経伸長抑制物質)。現在人間の細胞にセマフォリン3Aを作らせる薬を開発中だといいます。2019年日本初の痒み治療専門の研究施設、順天堂かゆみ研究センターが設立されました。

痒みを起こす物質は20種類以上あり、痒みを抑える薬を開発するのがこの研究センターの特徴だといわれています。

何故研究が進むのかというと、経済的損失が挙げられます。2009年大阪大学皮膚科による試算では、1か月5000億円、年間6兆円の損失です。