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がんとの新しい戦い方

私達は生まれながらに「がん遺伝子」を持っているという。このがん遺伝子なしには私達は生まれることができないと考えられている。

増殖アクセル遺伝子
京都大学大学院 藤田恭之教授によると、

がんは多細胞生物の宿命、呪いと捉えることができるという。

ヘンリエッタ・ラックスさんは子宮けいがんで31歳で死去。

その細胞はがんのメカニズムを研究するために世界中の研究者に送られた。

そして1976年がんを引き起こす遺伝子が初めて発見された。

その遺伝子はSrc(サーク)と名づけられた。

その後Srcは、私達が生まれながらに持っている遺伝子だということが分かった。

Src(サーク)は生物発生の段階で重要な役割を持っている。

それは細胞の増殖を促す役割だ。

つまりSrc(サーク)がなければ私達は誕生できない。

京都産業大学 佐藤賢一教授によると、

Src(サーク)の正常な細胞の正常な働きの1つに、

新しい生命を作る受精の時に速やかに活性化し、卵が発生するのを助けるという役割がある。

精子が卵子に辿り着けるように、Src(サーク)は卵子に入口を開ける。

Src(サーク)の主な働き
・細胞の増殖(新陳代謝)を助ける。

・精子の卵子への侵入を助ける。

アクセル遺伝子の変異
東京大学大学院 野崎久義特任研究員によると、

ボルボックス(植物プランクトン)直径1mm 光合成をして生きている。

512個の細胞で構成、大きな細胞は人間の生殖細胞にあたる。小さい細胞は体細胞。

増殖を促すアクセル遺伝子、細胞増殖が進み過ぎないようにするブレーキ遺伝子がある。

この両方の遺伝子があることで、バランスが保たれ512個の細胞がキープされる。

バランスが崩れるとアクセル遺伝子が変異して大きな塊になる。それが「がん」。

このように人間でも25,000の細胞が分裂する時には100~200の変異が起こるという。

紫外線、活性酸素、喫煙、飲酒などによって変異の確率が高まると考えられている。

毎日発生するがん予備軍は、数千から数万個にものぼる可能性がある。

しかし細胞競合といって、正常細胞によってがん予備軍の細胞がはじき出される。

細胞社会の防御システム。細胞は色々な違いを感知し排除に利用している。

細胞は硬さなど物理的な違いや、膜上の科学的な違いを認識しているのかもしれない。

2022年現在、がん予備軍の前のちょい悪細胞を診断することはできていない。

近い将来、細胞競合でがん治療ができる日がくるかもしれない。

遺伝子治療
象は体長7m、細胞数は1500兆個(人間の40倍)でがんになるリスクは人間より多いはずだ。

ところががんによる死亡率は、人間約20%に対して象は4.8%と低く人間の1/4に過ぎない。

国立がん研究センターの大木理恵子氏によると、

象は強力ながん抑制のメカニズムを持っている。

増殖ブレーキ遺伝子(がん抑制遺伝子)の中で、最強のがん抑制遺伝子はp53

人間のp53 1つの細胞に1組

象のp53  1つの細胞に20組

マウスの実験ではp53を強力にすると短命だった。

カギはがん抑制遺伝子を正常に保ち続けること。

異常になったp53を正常な状態に戻す薬の開発が進められている。