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夢のクモ糸を人工的に作る!?

クモ糸の再現への一歩
クモの糸は自然界最強の糸だといわれています。人工的に作ることができれば画期的な素材になるということで、重要な一歩がありました。

クモの糸は古くから人類の憧れだったといいます。クモの糸の何が凄いかといいますと、軽くてしなやかで、しかも強いことです。コウモリがクモの糸に絡まって抜け出せないくらい強いといいます。

あるいは、クモの糸は軽々とトカゲを釣り上げます。クモの糸は簡単には切れません。同じ太さなら鋼鉄のワイヤーをしのぐ強さがあるといいます。クモの糸は科学者を魅了し続ける夢の繊維なのです。

クモの糸の素晴らしい特徴を人工的な繊維に取り入れることはできないか研究が進められています。クモのDNAの中から糸に関わる遺伝子の一部を取り出し、微生物に組み込みました。

そうしますと、微生物がクモの糸の材料となるタンパク質の一部を作り始めたといいます。この微生物をタンクで培養することで、タンパク質が大量に手に入りました。

それを材料に糸を紡ぎ、クモの糸の良さを取り入れた繊維ができ上がりました。この糸は世界的に有名なアウトドアメーカー(THE NORTH FACE)のTシャツにも使われました。

糸以外の製品にも応用が進められています。例えば自動車のドアです。プラスチックの中に例の特殊な繊維を混ぜ込むことによって、軽量で強靭で安全性の高い自動車ドアが開発できたということです。

糸の強さと伸縮性をクモの糸はそれを見事に両立していて、衝撃を吸収しなければいけない部材に応用できるのではないかと期待されています。

クモの遺伝子解明
今現在遺伝子を使ってクモの糸を作る研究が進んでいます。例えば、蚕にクモの糸の遺伝子を組みこみ、クモの糸に似た糸を作る実験が行われています。しかし、クモの糸と同じく再現するのは困難です。

実はクモの遺伝子は解析が難しく、これまでごく一部しか分かっていません。人工クモ糸実現の前に立ちはだかる大きな壁、それをのり越えようと挑んだのが、慶応義塾大学 先端生命研究所の河野暢明さんです。

クモのDNAは36億個(人間は31億個)の配列の中にもやっかいな特徴があるといいます。特に糸遺伝子に関わる部分は、繰り返し配列が多く含まれているといいます。

しかし、新型シーケンサーを用いることで、2年かかりましたがクモの遺伝子の塩基配列の全てを詳細に読み取ることができたといいます。そしてクモの糸の新事実が分かりました。

従来は、クモの糸のタンッパク質は7種類しか分かっていませんでした。それが39種類あることが分かりました。そのうちの20種類は未知のタンパク質です。

今後はそういったものも組み合わせながら作ることによって、天然の糸の強さを再現できるような工業的な発展が望めるのではないかと期待が高まっているようです。

今プラスチック素材が海洋汚染などの問題になっています。クモの糸のタンパク素材は、生分解性といって自然に返すこともできるので、繊維以外の応用も期待されますね。