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「推し」に何故全てを捧げてしまうのか?

アイドルやスポーツ選手、アニメキャラなどの最も応援する推しメンバーに、男女共に年間50万円以上、中には300万円以上つぎ込む人もいるという。

このように推しに全てを捧げるてしまう訳を、3人の論客が徹底分析。1つの疑問に対して色々な観点から掘り下げるのでなかなか興味深い。

<東京理科大学 認知心理学 森田泰介教授>
手が届かないから。推しに対する感情には恋愛感情が含まれている。恋愛感情は心理学の中では6種類ある。

その中でも「アガペー」が直結しているのではないか。それを理解するために、

「あなたが今一番好きなな人やキャラクターを思い浮かべて当てはまる番号を答えて下さい」

1.それに惹かれたのは顔やスタイルが自分の好みだったから。→ エロス(美への愛)

2.その笑顔が守れるのなら自分のことは二の次。→ アガペー
【アガペー(献身的な愛)の性質】
①継続的に一方通行の愛情を注ぎ込める。
②自分を犠牲にしても相手の幸せを喜ぶ。

※相手に手が届かなければ、被害を受けたり拒否されない安心して愛情を注ぎ込める。

3.他の誰かに奪われるかもと心配になる。→ マニア(狂気的な愛)

<敬愛大学 日本近世文学 畑中千晶教授>
距離を縮めたいから。井原西鶴「男色大鏡 1687年発行」男同士の純愛な恋心を描いた作品集。

巻5-3
【思いの焼付は火打石売り】
時は江戸前期、玉川千之丞という京都の歌舞伎役者のお話。この役者はなんとも美しい立ち姿、更に世に女性が嫉妬してしまうほどの美しいお顔立ち。絶大なる人気役者。

当時の人気歌舞伎役者にはファンが盛大な宴会を開いてお金を払って招き、ファンと役者の距離を縮めて気に入られようとするシステムがあった。

ある日、千之丞は気になる噂を耳にする。鴨川の河原を寝床にしながら拾った石を火打石として売って生活する男が、そんな暮らしになっても玉川千之丞のことを忘れられずに、「玉川深淵集」という本を執筆して仲間に見せているらしいと。

その男は元々は尾張の三木様と呼ばれるお金持ちだったが、千之丞に入れ込み過ぎて破産してしまった。そのことを知った千之丞は、河原にいる三木を訪ねて面会した。

推しに貢ぐシステムがある限り人間の普遍的な欲求は止まらないのではないか。しかし、縮まり過ぎると見たくないところまで見てしまうという弊害も出てくる。

三木は、つまらぬ人が訪ねてきて私の楽しみを妨げたといって、どこか他の土地へ消えてしまった。

追いかける立場だったのが、追いかけられる立場になると嫌になった。主体的にその関係を発展させたいのに追いかけられることになると逃げ出したくなるのかも。

<東京大学 海洋生物学 佐藤克文教授>
命懸けだから。野生動物にとっての推しは自分のDNAでは。オオミズナギドリという海鳥の調査によると、毎年つがいになって1度だけ1羽だけのひなを育てる。

すると、5ペアいると1ペアぐらいはお父さんと子供の血のつながりがないという。つまりメスが浮気をしている。小さなオスが浮気されやすい。

大きなオスは人気があって、メスは2番手3番手を選ばざるを得ない場合もある。その場合、体が小さくても家があるとオスは結婚はできるようだ。

これは、メスは子供に伝える遺伝子を有利にするために良い遺伝子を持つオスと交尾すると考えられている。野生動物を調べるほど合理的なことをやっている場合が多いそうだ。