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なぜ人は空気を読むのか?

新型コロナウィルスによって、政府の自粛要請に従い法的規制もないのに、多くの日本人はマスクの着用を受け入れました。

それは感染拡大を心配してのことですが、日本人は空気に流されやすいからだという指摘もあり、空気とはなんなのでしょうか?

山本七平「空気の研究」1977年によると、「空気とは非常に強固で絶対的な支配力を持つ『判断基準』であり、それに抵抗する者を異端として『抗空気罪』で社会的に葬るほどの力を持つ超能力であることは明らかである」

ケース1
仲良しの友人たちにクラスの特定の1人を仲間はずれにしようと誘われたらどうするか?
道徳的に間違ったことをすすめてくる。

ケース2
忘年会で先輩たちから一気飲みするように言われたらどうする?
自分に危険があることをすすめてくる。

いずれのケースでも従わないと自分に不利益が生じる。倫理的ジレンマはあるが、従ってしまう。それは社会規範(社会全体が持っている規範)による同調圧力として働くからだと考えられています。

空気を読んでおけば安心、もめごとを避けたいという心理は働く。この同調圧力は日本だけではなく、世界の国々存在するといいます。

1930-1940年代のナチス・ドイツによるユダヤ人迫害、全体としてはユダヤ人の迫害に協力するか少なくとも異論を唱えることがなかったといいます。他国に逃れたユダヤ人研究者によって同調圧力の研究が始められたといいます。

心理学者ソロモン・アッシュ(1907-1996)によると、

同調の理由1
自分が間違っていると思う(情報的影響)

同調の理由2
自分が間違っていないが悪目立ちしたくない(規範的影響)

※安全と個人の自由のバランスが重要だと考えられます。

自由の制限が正当化されるパターン
1.他者危害原則
他人に危害を加えるならばその自由は認められない。他人の安全を優先するという考え。受動喫煙を防ぐために喫煙が制限されるなど。

2.パターナリズム
自分自身に害を与えてしまうことを周りが強制的に防ぐ。本人の安全のため。ヘルメットやシートベルトなど。

※新型コロナウィルス感染拡大を防ぐために行動を制限する十分な理由にはならない。

若い人は感染しても重症にならないかもしれない。感染していないから外出してもいいのではないかと考える人がいてもおかしくない。

3.全体の利益
人々の自由をある程度制限した方が1人でも多くの人命が救える。多数の安全のため。裁判員制度、コロナ禍における外出自粛など。

日本の場合は、コロナ禍の中で同調圧力が全体として良い方向に働いたと考えられます。

但し、自粛要請による同調圧力は一方で監視、密告、嫌がらせなどの自粛警察を生み出しました。同調圧力は簡単にコントロールできない。ルールが法律ほど明確ではないからです。

SNSは色々な人が意見を自由に表明できるが、少数の意見であっても非常に多くの人の意見のように見える危険性もあります。

声の大きい人の意見が多数派に見え、黙っている多くの人も同じ意見を持っているように推測してしまう時があるのかもしれません。SNSでの同調圧力のコントロールは難しい。