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カツラボクサーのリベンジ

かつらがズレた
2005年12月13日。ボクサーの聖地後楽園ホールで行われた試合、コグチさんはパンチをもらう度に髪の毛が不自然に揺れ、それはかつらがズレたからだった。

当時28歳のコグチさんは無名ボクサーで、実は引退試合だった。静かにボクシング人生を終えようとしたが、最後位カッコつけたいと思い、人生で初めてカツラを被った。

3ラウンド目の序盤に悲劇、相手選手の左フックをもらった時にかつらがペロッと瞬間的に剥がれた。効いてはいないが一番の急所に当たったようだ。

客席は笑っていいのかダメなのか微妙な空気が流れたという。その後コグチさんは試合途中でかつらを取った。試合はコグチさんが7ラウンドTKO勝ち。

引退しようと思っていたのが試合中にカツラがズレてしまうというハプニングが起こり、カツラボクサーだと日本中に知られてしまった。

その後の人生
追い打ちをかけるように不幸が重なった。内緒でプロボクサーとして活動していたので勤めていた会社を首になる。また日本中に知れ渡ってしまったせいか、付き合っていた彼女にふられる。

コグチさんはどこかに逃げてしまいたかったが、ジムの会長に「自分で蒔いた種だろう。男なら逃げるな」といわれた。

コグチさんは全取材に真っ向から挑むことを決意し、さらに現役続行を決断する。連日の取材が続いたが、どんないじりもあの試合にを超えていないことに気づく。

いつのまにかいじられることがオイシイと覚え始めたという。そんな中嬉しいサプライズ。それは育毛剤のスポンサーとかつらのスポンサーを獲得したこと。

スポンサーの応援に応えるためにもチャンピオンを目指して日々トレーニングに励んだ。試合では、超満員の後楽園ホールの中でアフロのかつらを被って入場パフォーマンス。

かつらで入場した結果、10戦9勝。日本ランキング5位に浮上した。その後スーパーフェザー級タイトルマッチが決まる。対戦相手は格上の三浦隆司選手、2回ダウンするが最終ラウンドまで戦った。

その後人生最大の幸運に出会う。ふらりと入ったスナック、店を手伝っていた女性は彼の試合を観戦していた。彼女は「逆境での心の強さ、カッコいいです」という。

コグチさんは、初めて容姿ではなく中身を見てくれたことに感動した。その2年後2人は結婚した。